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クサアジは何の仲間?

ヒメクサアジ(提供:椎名まさと)

クサアジは先述の通り名前に「アジ」とありますが、アジ科の魚ではなくクサアジ科の魚になります。

クサアジ科はアカマンボウ目のなかに置かれることが多くありますが、アカマンボウ目のほかの魚と形態的には大きく異なっています。身質もアカマンボウ目の魚であるサケガシラリュウグウノツカイなどよりは一般的な魚に近い感じとなっており、個人的には見直しの必要があるグループだと思っています。

クサアジ科のもう1種、ヒメクサアジ

なお、現生のクサアジ科は2属からなり、それぞれの属に1種ずつが知られています。もう1種のヒメクサアジ(学名 Metavelifer multiradiatus)はクサアジによく似ているものの、成魚は背鰭の第6棘が著しく長く伸びるという特徴があり、クサアジとの見分けは難しくありません。

また臀鰭の棘数はクサアジが1であるのに対し、ヒメクサアジでは16~18と多いのも特徴です。またヒメクサアジでは体側後上方に大きな黒色斑が入ります。

クサアジを食する

クサアジの刺身(撮影:椎名まさと)

そんな分類学の世界において謎が残るクサアジも美味しく食べられる魚です。

身は白身でうっすらと赤く、アカマンボウを彷彿とさせます。刺身にして美味しい魚ですが、煮つけや塩焼きなど、ほかの料理でも美味しく食べることができるのではないかと思っています。

クサアジの煮付け(撮影:椎名まさと)

身がみずっぽくやわらかいサケガシラやリュウグウノツカイとはかなり違うように思えます。また、今回のクサアジは抱卵個体であり、卵も煮つけでいただいたところ非常に美味でした。

クサアジの入手について

クサアジもヒメクサアジも普通種、とはいえませんが両種ともに浅場の定置網や底曳網などで漁獲されることがあります。

底曳網の網元より入手した魚。右端にヒメクサアジの姿も(撮影:椎名まさと)

しかしながらクサアジもヒメクサアジも、ほぼ利用されることはなく、通常は投棄される、または発泡スチロールの中にほかのあまり利用されない魚種とともにひとまとめにされていることが多いですが、近年はそのようなあまり利用されない魚も、インターネット、とくにSNS(FacebookやXなど)を使って販売されることが増えてきました。

クサアジを食べてみたいという方は、SNSを駆使しそのような漁師さんや仲買さんとつながってみてはいかがでしょうか。そうするとクサアジのほかにも、いろいろな珍しい魚と出会えるかもしれません。

(サカナトライター:椎名まさと)

参考文献

Smith M.M. and P.C. Heemstra (eds.) 1986. Smiths’ sea fishes. Springer-Verlag, Berlin.ⅩⅩ+1047 pp.

山田梅芳・時村宗春・堀川博史・中坊徹次. 2007. 東シナ海・黄海の魚類誌.東海大学出版会,秦野.IⅩⅩⅤⅰ+1262pp., 54pls.

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椎名まさと

魚類の採集も飼育も食することも大好きな30代。関東地方に居住していますが過去様々な場所に居住。特に好きな魚はウツボ科、カエルウオ族、ハゼ科、スズメダイ科、テンジクダイ科、ナマズ類。研究テーマは魚類耳石と底曳網漁業。

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