備讃灘のクラゲ
「ぬらりひょん=クラゲ説」が正しいとすれば、どんなクラゲが該当するだろうか。
瀬戸内海にてふつうにみられるクラゲはミズクラゲとアカクラゲであるが、ぬらりひょんの伝承のように人の頭ほどに大きく成長するものはこれらの種では該当しない。また、ミズクラゲとアカクラゲの傘はどちらかといえば円盤状であり、丸い玉のような形とは言えないだろう。
これらの条件を一番満たしているクラゲがビゼンクラゲである。ビゼンクラゲの傘は直径40~50センチまで成長する。人間の頭大に成長する個体は珍しくないだろう。
また、傘が肉厚で立体的であることも、丸い玉のような外見に適合する。特筆すべきは青っぽいような半透明の傘の色で、なんとなく妖怪のようで怪しい感じがある。
ビゼンクラゲは傘が肉厚であることから食用にもされていて、岡山の名産品として古くから有名であり中華食材として輸出もされている。瀬戸内海の妖怪の正体は、おいしい高級中華の材料なのかもしれない。
(サカナトライター:宇佐見ふみしげ)
参考文献
季刊自然と文化 1994年秋季号 日本ナショナルトラスト
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