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ハナミノカサゴの引き起こす問題

ハナミノカサゴは日本近海をふくむ東インド洋~太平洋に生息していますが、現在はアメリカ東海岸の西大西洋~カリブ海にも移入され生息。ハナミノカサゴは幅広い生息環境に適応しており、動物食性であるため魚などを捕食してしまうというわかりやすい影響が考えられます。

また、ミノカサゴ以外の動物食性の魚、つまりはフエダイやハタ科の魚と餌が競合しています。例としてハタ科ユカタハタ属のコニーよりも著しく成長が早く、また消費する餌の量もはるかに多いとされます。

そしてサンゴ礁そのものにも大きな影響を与えるおそれがあります。ハナミノカサゴが藻類食性の魚を食べてしまうと、サンゴに生える藻類の大量発生によってサンゴが藻類に被われてしまう可能性があるのです。

藻類を好んで食べる魚により藻類の大発生を抑えられてきたのですが、藻類食の魚がハナミノカサゴに捕食され減少、それによりサンゴの生育に悪影響をおよぼすことが危惧されます。

大西洋産のキンチャクダイ科魚類ホクロヤッコ。西大西洋産の熱帯魚にとってサンゴ礁の破壊は脅威(撮影:椎名まさと)

もともと大きく壊されてきた同海域のサンゴ礁域で、サンゴの生育に悪影響が及ぶということになれば、同海域のサンゴ礁が壊滅するおそれもあるわけです。サンゴ礁のコミュニティはバランスが保たれて成り立っていたのですが、ハナミノカサゴがやってきてそのバランスが崩れてしまいました。

また、ハナミノカサゴが移入されたカリブ海というのはダイビングなど、マリンレジャーが人気の海域ではありますが、お客さんがハナミノカサゴに刺されてしまう可能性もあります。実際にバハマのナッソーなどではハナミノカサゴに注意するよう看板が出されているようです。

カリブ海から西大西洋地域のハナミノカサゴの出現は飼育個体に由来するのは確かなようですが諸説あり、ハリケーンの際にハナミノカサゴを飼育していた水族館が損壊しそこから逃げ出したとか、飼育しきれなかったアクアリストが海に逃がしたとかいわれています。

ミノカサゴ属の魚は(ほぼ)すべての種が観賞魚として飼育されていますが、ミノカサゴに限らず飼育していた魚を海に逃がすようなことは絶対にやめましょう

(サカナトライター:椎名まさと)

参考文献

Morris James (Jr.)(ed.) 2012. Invasive Lionfish: A Guide to Control and Management.
Gulf and Caribbean Fisheries Institute, Inc. Florida.113 pp.

Smith M.M. and P.C. Heemstra (eds.) 1986. Smiths’ sea fishes. Springer-Verlag, Berlin.ⅩⅩ+1047 pp.

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椎名まさと

魚類の採集も飼育も食することも大好きな30代。関東地方に居住していますが過去様々な場所に居住。特に好きな魚はウツボ科、カエルウオ族、ハゼ科、スズメダイ科、テンジクダイ科、ナマズ類。研究テーマは魚類耳石と底曳網漁業。

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