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手軽に観察できるけど取り扱い注意の<ニジギンポ> 小さな体に似合わない巨大な武器とは?

日本のほとんど各地の海で見られる細長い小魚、ニジギンポ。見た目は可愛いらしく、無害そうな見た目の魚です。しかしながら、このニジギンポは小さな体に似合わない、“巨大な武器”を隠しているので注意が必要です。

このニジギンポの武器とはいったいどのようなものなのでしょうか?

ニジギンポとは

ニジギンポ Petroscirtes breviceps (Valenciennes, 1836)はスズキ目・ギンポ亜目・イソギンポ科・ナベカ族・ハタタテギンポ属の海水魚です。イソギンポ科の魚としては、マリンアクアリストにお馴染みの魚であるヤエヤマギンポや、ヒトスジギンポなどが含まれていますが、ナベカ族ということでこれらの魚とは分類学的には離れた魚になります。

また、種標準和名のギンポや、ダイナンギンポとは異なる亜目の魚であることにも注意が必要です。ニジギンポはギンポ亜目ですが、種標準和名のギンポやダイナンギンポなどはゲンゲ亜目に含まれています。

ニジギンポの武器

ニジギンポはゆっくりと泳ぐ魚で、子どもでも容易に捕まえることができる魚です。

しかし、ニジギンポを素手で触るときには注意が必要。というのもニジギンポは下顎に大きな牙のような歯を有し、咬まれるとけがをするおそれがあるのです。

ニジギンポの下顎には牙状の歯がある(撮影:椎名まさと)

この仲間は下顎の特徴的な歯から英語で「Fang blenny」(牙ギンポ)「Sabretooth blenny」(サーベルのような歯のギンポ)なんて名前で呼ばれています。

その牙の威力はなかなかのもので、ニジギンポが釣れて針を外しているときに咬まれてしまい、手が血まみれになってしまいました。咬まれたら水道水で手を洗って消毒するようにしましょう。

ニジギンポの仲間たち

ニジギンポに近い仲間には他にも顎に鋭い牙を持つものが知られています。

特にヒゲニジギンポ属の魚には牙に毒腺があるともいわれており、注意が必要です。ニジギンポを含むハタタテギンポ属の魚のなかには、この有毒のヒゲニジギンポ属の魚に擬態するものも知られており、本種もヒゲニジギンポやカモハラギンポなどに擬態していると考えられる色彩のものも採集されています。

また、ホンソメワケベラによく似た色彩を有するニセクロスジギンポもニジギンポに近い魚です。ホンソメワケベラはほかの魚の体表や口腔内に寄生する生物を捕食する「クリーナー」としても知られていますが、ニセクロスジギンポはホンソメワケベラと思って近寄ってきた魚の鱗や皮膚の一部を食いちぎるようにして食べてしまうという習性をもっています。

ニセクロスジギンポ(撮影:椎名まさと)

一方、先述のヒゲニジギンポは主に動物プランクトンを食し、ニジギンポは藻類(主に珪藻)甲殻類などを食べる雑食性の魚とされていますが、実際にはヒゲニジギンポもニジギンポも、ほかの魚の鰭などをかじることがあります。そのため、ほかの魚と同じ水槽で飼育するのは避けたほうが無難でしょう。

また、ニジギンポは藻類を食べるといいますが、飼育下ではカエルウオの仲間とはことなり、水槽の壁面に生えた藻類などはほとんど食べてくれませんでした。動物性の餌(配合飼料は多くが魚粉ベース)が手に入りやすい水槽では、動物性の餌を優先的に摂食し、肉食にシフトするのかもしれません。

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椎名まさと

魚類の採集も飼育も食することも大好きな30代。関東地方に居住していますが過去様々な場所に居住。特に好きな魚はウツボ科、カエルウオ族、ハゼ科、スズメダイ科、テンジクダイ科、ナマズ類。研究テーマは魚類耳石と底曳網漁業。

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