スズキ目カジカ科の日本固有種の魚、カジカ。見た目で敬遠する人も少なくないのではないだろうか。
けれども知れば知るほど興味深いこの魚を「釣り」と「グルメ」の視点から紹介したい。
釣り人から見た「カジカ」
釣りの醍醐味は何といっても“大物が釣れたかもしれない感”。カジカはそんな釣り人の欲求をいつも満たしてくれる魚だ。
30センチ近くある大きなサイズはもちろん、小ぶりな手のひらサイズでも針にかかった時の手応えは大きい。釣りやすく、糸の引きが強いので、初心者に釣りの楽しさを教えてくれる魚でもある。
カジカが釣れた時の楽しみの一つとして、“釣られる姿”がある。口角の下がった口をあんぐりと開け、ブサかわいい顔を見せながら、胸びれをパタパタさせ、さらにはでっぷりとしたボディをくねくねバシャバシャ暴れさせながら釣られてくるのだ。
釣り方は「ロックフィッシング」といって、疑似餌を使って岸壁や海底にいる魚を狙う。カジカは、手の小指ほどもない大きさの餌を大きな口で丸呑みしてくる。
釣れた後にこれまで食べてきたエサを吐き出すこともあり、イカのゲソが出てきたりもする。イカなぞ高価で人間でもなかなか食べられないというのに、贅沢なお魚である。
グルメから見た「カジカ」
「鍋壊し」とは、カジカの通称。鍋にすると美味しいため、取り合いになり箸をつつき合う勢いで鍋を壊してしまうことから、そう呼ばれるようになった。
そんなに美味しいのか。釣ったカジカを実際に食べてみる。
カジカの頭はゴツゴツしていて固い。骨も固いので断ち切るのが大変だ。包丁を使いつつ引きちぎるという、よくある魚さばきとはちょっと違う。ところどころトゲトゲしているので、軍手があったらさばきやすい。
でっぷり立体的な魚体なので、3枚におろしてもなお身の厚さが感じられる。一口大に切り、ネギ、人参、白菜と共に味噌で煮込んだ。
わかるだろうか。この美味しそうなアブラが汁に溶け込んでいるのが。
身はぷりぷりして美味しい。汁はコクがあり味わい深い。これがあれば白飯が何杯でもいけるだろう。
グロテスクな見た目からは想像もつかない、やさしい味を演出してくるカジカ。
これは高級魚にランクインしても良いのではないか……と思っていたら、スーパーで97円で売られているのを発見。こんなコスパの良い魚がいて良いのだろうか。
「釣った魚を食べる」。生きていた姿を見てから命にメスを入れるのはとても心苦しいところだが、これは海の食育だ。
見た目がブサ可愛く、いかついけれど美味しいカジカなら、食育に一役買うのではないだろうか。
(サカナトライター・川辺真理子)