日本の生態系を脅かす外来魚といえばオオクチバスやチャネルキャットフィッシュが有名ですが、近年、コウライオヤニラミと呼ばれる新たな外来魚が注目を集めているのをご存知でしょうか?
本種は宮崎県の大淀川水系の一部で発見された後、僅か数年で分布域を拡大しており、在来生物に大きな影響を与えていることから早急に対処することが望まれています。
コウライオヤニラミとは
コウライオヤニラミはスズキ目オヤニラミ科に属する淡水魚。原産地は朝鮮半島ですが、2017年に宮崎県の大淀川から発見されています。
日本のオヤニラミとは近縁であるものの、最大全長が異なりコウライオヤニラミは30センチ以上に成長するのに対して、オヤニラミは12センチ程度です。
2種は形態からも識別可能で、コウライオヤニラミは側線有孔鱗数が50~59、背鰭軟条数が13~14であるのに対して、オヤニラミは側線有孔鱗数が33~38、背鰭軟条数が11~13であることから区別することができます。
コウライオヤニラミが大淀川水系で大繁殖?
国内では2017年に大淀川の支流である萩原川で初めて発見されたコウライオヤニラミですが、その後、急速に分布域を広げていることが判明しています。
2018年の調査でコウライオヤニラミは中流域の限られた区間のみから確認されたに過ぎませんが、2017年の時点で萩原川と大淀川の合流地点から発見されていることから既に大淀川本流に広がっている可能性も否めないとしています。また、同調査では様々な大きさのコウライオヤニラミで捕獲されており、これは本種が萩原川で再生産していることを示すものでした。
2021年に実施された調査ではコウライオヤニラミが大淀川水系の広い範囲から捕獲され、個体数の増加も確認。調査を行った場所ではヨシノボリ類、ドンコ、モツゴ、カマツカ、オオヨドシマドジョウが減少していることから、本種による捕食が影響していると考えられています。
オオヨドシマドジョウの危機
2023年に行われた調査では大淀川水系の大淀川第一ダムより上流の55地点で採水、環境DNAの解析を行い、コウライオヤニラミの拡大状況及び、他の魚に与える影響を明らかにしました。
解析の結果、29種の魚類のDNAが検出され、コウライオヤニラミは僅か数年で大淀川水系のほぼ全域(39地点)に侵入していることが判明しました。また、カワムツやヨシノボリ類、カマツカなどの環境DNAの濃度はコウライオヤニラミの環境DNAの濃度に依存して低下することも明らかになったといいます。胃内容物解析でも魚の他にエビ類や水生昆虫が捕食されていることが明らかとなり、コウライオヤニラミが生態系に大きな影響を与えている証拠となりました。
大淀川の固有種であるオオヨドシマドジョウもコウライオヤニラミの影響を強く受けており、既に壊滅状態にまで追いやられているといいます。
コウライオヤニラミは2017年の発見から僅か数年で個体数を増やし生息域を拡大しました。2024年6月現在、本種は特定外来生物に指定されておらず、駆除活動も行われていません。大淀川水系の生態系をこれ以上壊さないためにも早急に対処することが望まれています。
このように飼育個体を自然下に放流する行為は生態系を容易に破壊していまうことを多くの人々が知らなければなりません。
(サカナト編集部)
参考文献
(大淀川水系におけるコウライオヤニラミの分布拡大と推測される在来魚類に与える影響)
(宮崎県大淀川水系から得られたオヤニラミ属魚類コウライオヤニラミ)
(“超”侵略的?!新たな外来魚コウライオヤニラミ―環境DNA調査で明らかとなった深刻な分布拡大と魚類相への影響―京都大学)