学名で使われる”sp.”とは?
“sp.”は上述の”sp.nov.”同様に”species”(種)の略で、「~属の一種」のことになります。
例えば、ある魚が採れた。ギンガメアジ属に同定されるとは思うが、種はわからず未同定である。そのようなときにCaranx sp.というように使用します。なお”sp.”というのは学名ではなく、この部分はイタリック体では表記しません。
また標準和名があっても、学名がついていないような種に「sp.」とすることがあります。たとえばマゴチ(コチ)の学名については長らくインド-西太平洋に生息するPlatycephalus indicusとされていましたが、この学名の種(ミナミマゴチ)とは異なることがわかり、未記載種であるとされています。
釣り人に親しまれているマゴチですが、学名はなく、標準和名はあるものの、現在も「名無し」のままなのです。ほかにも学名のルールは色々あるのですが、ここでは端折ります。
学名を使いこなそう
学名は世界的に使用される生物の名称であり、とくに外国の本や英語の文献にあたるのには学名を覚えることが重要になります。
すべての種の学名を覚えるのは困難でしょうが、興味ある分類群の学名はぜひとも覚えておきたいところです。
(サカナトライター:椎名まさと)
参考文献
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岡村 収・尼岡邦夫(1997)、日本の海水魚、山と渓谷社、784p
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Randall, J.E., M.L. Bauchot and P. Guézé 1993. Upeneus japonicus (Houttuyn), a senior synonym of the Japanese goatfish U. bensasi (Temminck et Schlegel). 魚類学雑誌. 40 (3): 301-305pp
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