近年、大手スーパーの魚売り場でサケやタラなどと共に「パンガシウス」という魚の切り身が売られています。
パンガシウスとは一体どのような魚か。今回はこの謎の魚をご紹介します。
パンガシウスは東南アジアの大鯰?
パンガシウスとは、ナマズ目パンガシウス科パンガシウス属に属する汽水・淡水魚の総称で、東南アジアを中心に広く分布しています。パンガシウス属と聞くと馴染みがありませんが、この属には怪魚として有名なメコンオオナマズも含まれています。
パンガシウスは環境の変化に強いこと、成長速度が早いこと、非常に大きく成長することから、抵コストで生産できる養殖魚として注目されています。さらにクセのない味わいから、様々な料理に使うことができるのも特徴です。
パンガシウスという名前は学名のPangasiusをそのまま日本語読みしたもので、他にも「チャー」または「バサ」という別名を持ちます。日本国内ではパンガシウス、または、単に白身魚という商品名で流通することが多いですが、「バサ」や「チャー」と表記している場合もあります。
日本が輸入しているナマズの大部分はパンガシウス
日本が輸入しているナマズ類は数種いますが、その中でもパンガシウスの輸入量が最も多い種として知られています。
ナマズ類の国別の輸入割合では、ベトナムが大部分を占めます。ベトナムで生産されたパンガシウスは世界各国に輸出され、市場規模を拡大しています。
日本に輸入されるパンガシウスの多くは皮を剥いた冷凍フィレ(三枚おろしの状態)であり、フィレ以外の状態での入荷は非常に稀です。
輸入したフィレはそのままの状態で売られることもあれば、調理する手間を省くために洋風または和風に味付けされた状態も売られています。味付けされていないものはフライやムニエルに向き、味付けされたものはそのまま焼くだけで美味しく食べることができます。
また、大手スーパーのイオンでは、2017年の土用丑の日にASC認証(環境と社会への影響を最低限にした責任のある水産物の証明)の「パンガシウスの蒲焼き」を販売したことが話題となりました。
東南アジアではナマズ食文化が一般的
パンガシウスを養殖しているベトナムをはじめとする東南アジアではナマズ食はメジャーであり、ナマズは日常的に食べられています。かつて、日本でもナマズ食が発展していましたが、現代の日本ではナマズ食はあまり馴染みがありません。その一方で、輸入ナマズの輸入量は2017年にかけて上昇しており、小売店で見かける機会も増えてきました。
パンガシウスは低コストで生産でき、様々な料理に向くことから水産資源の枯渇に対応できる種として今後も期待が高まっていくでしょう。名前に馴染みがない魚は敬遠されがちですが、どういった魚なのかを理解した上で美味しく食べることも大切ですね。
(サカナト編集部)