ウツボ食の今後
ウツボは動物食性が強く「海のギャング」的な扱いをされていることがあります。バラエティ番組はもちろん、報道番組などでも、この不名誉なニックネームで呼ばれることがあります。
ウツボは三重県の志摩エリアでは高級なエビであるイセエビを食い荒らすとされます。なんでも、もともとイセエビの天敵であったタコがウツボにほぼ食い荒らされてしまい、代わりにイセエビを襲うようになったのだとか(「水揚げ半減! 伊勢海老を脅かすウツボ激増の深刻」東洋経済オンライン、2023年6月11日)。
しかしながら「海のギャング」などと誇張して報道するのは問題があります。実際にイセエビの減少は餌生物の多い藻場の減少も大きな理由とされており、ウツボは確かにイセエビを食することもあるのですが、「海のギャング」という渾名はさすがに言い過ぎでしょう。
かつて「海のギャング」と恐れられたのはサメでしたが、サメの駆除が進んだ結果、ホホジロザメなどは個体数が大きく減少してしまったことがあり、南アフリカなどでは保護対象種とされました。現在は「フカヒレ」需要により、国際取引が制限されているものが多いです。
実際にウツボについても、主だった産地である高知県などでは減ったという話を聞きます。各マスメディアの姿勢についてもウツボは「厄介者」「駆除」と過剰な漁獲を正当化するようなものが目立ちますが、これはどうなのかと思う筆者です。
(サカナトライター:椎名まさと)
参考文献
榮川省造.(1982)、新釈 魚名考、青銅企画出版、607p
瀬能 宏・小野篤司(2000)、今月の魚 ウツボ、I.O.P. Diving News.、Vol.11、No.1
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