魚類はそのほとんどが卵生。つまり卵を産み、増えていきます。中でもタナゴの仲間は産卵方法が少し特殊で、二枚貝に産卵します。
この記事では、タナゴの産卵方法や二枚貝との関係性について紹介していきます。
タナゴの仲間たち
タナゴとは、コイ目コイ科タナゴ亜科に属する魚の1種、またはタナゴ亜科に属する淡水魚の総称としても使われる言葉です。
この記事では、タナゴ亜科に属する総称として「タナゴ類」という言葉を使います。タナゴ類は一般的に広く使われている言葉なので、覚えておくと良いでしょう。日本には、定着した外来種を含めて18種ほど生息しています。
タナゴ類の魚は体高が高く、左右に押しつぶされたような形をしています。オスは婚姻色が綺麗で、種によって個性豊かな体色が楽しめることから観賞魚としても利用されています。
全長はいずれの種類も数センチから10センチほどの小型な魚です。同じ種類内では、メスよりオスが大きい場合が多いです。
食性は雑食性で、藻類や水草、プランクトン、水生昆虫など、様々なものを食べます。タナゴ類のなかでもカネヒラやイタセンパラでは植物性が強く、その食性は特定の種を狙った釣りでも活用されます。
そして、タナゴ類最大の特徴はその産卵方法。タナゴ類は、共通して淡水性大型二枚貝類に産卵するという特徴があるのです。
タナゴの繫殖行動
タナゴ類は淡水にすむ大型二枚貝に産卵、産まれた仔魚もその二枚貝の体内で生活します。産卵に利用される二枚貝のことを産卵母貝と呼びます。
産卵に利用される二枚貝はイシガイやカラスガイなどが多く、種や地域ごとに異なる傾向が観測されます。
タナゴ類はほとんどの種が春から夏にかけて繁殖しますが、カネヒラ、ゼニタナゴ、イタセンパラの3種は秋に産卵します。
繁殖期のオスには鮮やかな婚姻色が発現し、吻先には白く小さな追星が出現します。タナゴ類の婚姻色はピンクや水色、薄緑など綺麗なものが多く、鑑賞や釣りの対象魚としても人気です。
種により傾向は異なりますが、オスは条件のよい二枚貝の周辺に縄張りをつくり、ときには争います。基本的にオスがメスを二枚貝に誘いますが、セボシタビラやアブラボテなどの種ではメス同士も闘争を行うことがあります。
産卵管を使い二枚貝に産卵する
タナゴ類のメスは二枚貝に産卵するため、産卵管がよく発達しています。メスは貝の出水管に管を差し込んで卵を産み付けます。
そして、オスが素早くやってきて入水管付近に放精。貝が水を取り込むのと同時に精子が貝の中に運ばれ、貝の中で受精が完了します。
タナゴ類の卵は数ミリ程度で、電球型や楕円形をしていることが多いです。卵は数日のうちに孵化しますが、種により3週間から1カ月、秋産卵型の種では半年ほど二枚貝の体内に留まります。
仔魚は卵黄を吸収しながら成長し、外に出る頃には約1センチ近くになっています。
産卵母貝との歪な共生関係
タナゴ類が二枚貝に産卵する一方、二枚貝はグロキディウムと呼ばれる幼生をタナゴ類に寄生させて繁殖する共生関係にあると言われることがあります。インターネット上でも「カラス貝の繁殖にはタナゴが必要」と書かれていることがありますが、これは間違いです。
グロキディウムは殻についている牙で淡水魚のひれに噛みついて皮膚の中に潜り、長時間にわたって寄生し分布を広げているのですが、タナゴ類は生まれつきグロキディウムに対する抵抗性を進化させているので、二枚貝はタナゴに寄生することができないのです。
このことから、タナゴ類と二枚貝は単なる共生関係でなく、一方が利益を得る片利共生関係と言われています。タナゴ類は二枚貝に害を与えることもあるので寄生とも考えられるでしょう。実際、二枚貝は産み付けられたタナゴ類の卵や仔魚を吐き出そうとする傾向もみられるそうです。
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