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東京三大サメの一種<ホシザメ>は体表に星を持つ? 鱗・まぶた・歯の各部位を観察してみた

サメと聞くと、凶暴で恐ろしい生き物というイメージを持ちがちだと思います。ですが、食生活をよく目を凝らして見てみると、フカヒレなどに形を変えて意外と近くにいたりします。

今回はそんなサメの中でも親しみやすい一種・ホシザメについて紹介します。

スターの名を持つサメ・ホシザメ

ホシザメは“東京三大サメ”にも数えられるサメの一種で、メジロザメ目ドチザメ科のサメです。

東京三大サメとは、東京湾でよく見ることができるサメの愛称で、ホシザメのほか、同じメジロザメ目ドチザメ科のドチザメシロザメを指します。ただ、ホシザメに関しては、東京だけではなく、日本では北海道より南のほとんどの地域で見ることができると言われています。

では実際に、ホシザメの名前の由来や体の特徴などを詳しく探っていきましょう。

ホシザメの“星”

ホシザメは、映画に出てくるようなホホジロザメやメジロザメのような、人の背丈よりも大きい体を持つ「いかにもなサメ」とは違い、大きく成長しても1.3~1.4メートル前後です。

ホシザメ(提供:PhotoAC)

ホシザメの最大の特徴は、なんと言ってもその体表の柄にあります。

ホシザメは、こげ茶色と灰色の間のような体色をしており、腹の部分はやや明るい白色になっています。体の背にあたる部分には、白いインクはねのような模様があり、その様子が夜空に浮かぶ星のようであることから、「ホシザメ」という名前が付いたと言われています。

ホシザメの鱗

星柄のついたホシサメの体表を近づいて観察してみると、細かい凹凸があるのが見えてきます。これは、基本的に全ての魚が持つ「鱗」です。

サケやマダイなどの、比較的大きな鱗を想像しているとイメージしずらいかもしれませんが、ホシザメに限らず、サメたちは鱗を持っています。

鱗はシールドであり、寄生虫対策であり、カモフラージュであり……

そもそも鱗とは、ただ体の外側を覆っている膜ではなく、様々な役割があります。

シールドとしてぶつかった時にできる外傷から身を守るために使われるのはもちろん、寄生虫被害の予防をができたり、光を上手く反射させてカモフラージュに利用したりと、これだけで一石二鳥以上の効果を生み出しています。

ホシザメの鱗(撮影:しょうじ)

さらに、鱗があることによって、海水と体内の水分の塩分濃度勾配による脱水症状を防ぐことができたり、微弱でも水圧や振動の変化を感じとることができたり、カルシウムなどを貯蔵し、自在に必要な栄養分をその貯蔵庫から補給することができるとされています。

そんな、魚類の最大の武器とも言える鱗は、進化の過程でそれぞれが生きやすい形に変化していきました。その最たる例が、速く泳ぐために進化したサメの鱗「楯鱗」です。

大きなカッターの刃も通用しない硬さ

以前、ホシザメを題材として標本制作を行ったのですが、サメの体から必要なパーツを切り出すために100円ショップで購入した大きめのカッターを用意していました。いざ作業をはじめようとした際、その鱗の固さやしなやかさにびっくりしたのを覚えています。

サメ自体が岩のように固まっているわけではないのに、この体表の硬さ……!

力を入れても、包丁の砥石や硬いやすりを刃先でなでているような感覚で、カッターの刃の方がやすれているのでは……!? と驚きました。

ホシザメのまぶた

人間は、1日に約1万5000~2万回の瞬きをするそうです。眼球を乾燥や塵・埃から守るため、一瞬だけ目に蓋をするんですね。

では、サメはどうでしょう。海中という乾燥知らずの場所でも瞬きをするのでしょうか。

実は、魚類のほとんどは瞬きをしません。そもそも、まぶたという体の器官が存在しないのです。

しかし、サメは人間でいうまぶたの役割をする「瞬膜」を持っています。ホシザメの瞬膜はどこにあるかというと、

まぶたが収納されている状態(撮影:しょうじ)

ここ(上記写真)にあります。

まぶたが閉じている状態(撮影:しょうじ)

瞬きをすると言っても、この瞬膜は普段、目の下に収納されています。サメの中でも瞬膜を持つ種類は、獲物をハンティングする際、外傷から眼球を守るために瞬膜を上げて「瞬き」をします

用途が違うとはいえ、サメと人間との共通点と言えるかもしれません。

ホシザメの歯

ホシザメは、主にカニやエビ、貝類、イカなどを捕食しています。甲殻類や貝類はとても硬い外骨格や殻を持っており、かみ砕いて食べるには強い歯が必要です。

私たちヒト科の歯が全て同じ形でないように、サメの歯にも様々な種類の形があります。では、ホシザメはどの様な形の歯を持っているのでしょうか。

ホシザメの歯(撮影:しょうじ)

ホシザメの歯は、肉をかみちぎるための鋭い歯ではなく、硬いものをかみ砕くための鱗のような平らな歯が無数に並んでいます。トゲトゲしていないので意外に思えるかもしれませんが、食べるものや生きる場所に適したカタチをもっています。

ちなみに、下の歯と上の歯の間にある白いものはホシザメのです。

サメにはある特別な器官「ロレンチーニ瓶(器官)」

ちなみに、サメにはある特別な器官があることを知っていますか?

写真の深いくぼみのようなものは「気孔」と呼ばれる、いわゆる鼻の穴になります。この器官は呼吸のための鼻ではなく、海中にいる獲物の匂いをかぎ取るためのものであり、サメは特にこの器官の構造が複雑で発達しています

ホシザメの頭部・右半分(撮影:しょうじ)

多少の違いはありますが、鼻は別の生き物にもある普通の器官です。特殊な器官とは、この鼻の穴の周りに無数にある、この黒いポツポツのことです。

これらは「ロレンチーニ瓶(器官)」と呼ばれ、自分や周囲にいる生き物の微弱な電気信号を感じ取ることのできる優れモノです。

このロレンチーニ瓶で獲物の動きや位置を正確に感じ取り、狩りに活用します。この黒く見えるポツポツは、ひとつひとつが小さく開いた穴状になっており、内部にはゼリー状の液体と神経たちが詰まっています。

これらは特に頭部に集中しており、全てのサメに共通する特徴であるとも言えます。

ホシザメの子どもを観察しよう

最後に、成体のホシザメだけではなく、稚魚のホシザメも観察してみましょう。

稚魚のホシザメ(撮影:しょうじ)

上記写真に写っているのは、親ザメを捌いた際に子宮から出てきた、産まれる直前の稚魚のホシザメと、筆者自身の手です。手は約横幅6.5センチ縦幅15センチでしたので、そのサイズ感が少し想像できるかと思います。

実際には触ってみると、背びれや胸びれなどは軟骨すらまだ通ってないのかと思うほど透明でふにゃふにゃでした。手の上に折り曲げて置いていますが、曲げようと思えばもう少し曲がると思うぐらい、背骨もまだやわらかく、どこもかしこもかなり透明でした。

ホシザメのアイデンティティ(撮影:しょうじ)

近くで見てみると、ホシザメの最大の特徴でもある星柄を観察することができました。元々の肌は親ザメと比べるとかなり明るめの茶色ですが、白い斑点はこの頃から健在なのです。

もっと近くで見てみると、サメ肌らしいザラザラな質感も観察できます。これこそまさにサメの鱗・楯鱗です。

ホシザメの稚魚のまぶた(撮影:しょうじ)

成体のホシザメにもあった「まぶた」も、稚魚のホシザメにありました。眼球の下側にある涙袋のような部分を引っ張ってみると、収納されているまぶたが出てきます。

お腹にいた子どもながらに、大人と同じような姿をしているのです。

サメの奥深さ

今回はホシザメの生態や体の特徴を紹介しました。この他にもまだまだ知られていないサメのおもしろい特徴は多数あります。

多くの皆さんから縁遠い存在だと思われがちなサメたちのことを、少しでも知っていただければと思います。

(サカナトライター:しょうじ)

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しょうじ

さもないサメ好き人。幼少期から全国の水族館巡りを趣味としながら、大学はデザイン系学科に進学。編集も文字書きも絵もイラストも満遍なくかじりつつ、現在はサメと人との架け橋的存在を目指して奔走中。

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