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サンゴ礁を彩る<ニザダイ科>のサカナたち 豊かな色彩とトゲが特徴【私の好きなサカナたち】

Web『サカナト』には様々な水生生物好きのライター(執筆者)が所属しています。そんなライターの皆さんが特に好きなサカナ・水生生物について自由闊達に語らう企画「私の好きなサカナたち」。今回はサカナトライター・宇野トモキさんによる「私の好きなサカナたち」をお届けします。

みなさんは「ニザダイ科」というお魚のグループを知っていますか?

熱帯域に生息する海水魚で、色鮮やかな体色であるため水族館でよく飼育されています。

この記事では、知られざるニザダイ科の特徴と分類をご紹介します。

ニザダイ科とはサンゴ礁や岩礁にすむ魚たち

ニザダイ科は、熱帯・亜熱帯域のサンゴ礁や岩礁に生息する海水魚です。ほとんどの種は草食性であり、海藻を食べます。

テングハギ(左)、クロハギ(右)(撮影:宇野友貴)

彼らの大きな特徴は、尾鰭の付け根 (尾柄部) にあるトゲです 。主にトゲの数によって、ふたつのグループに分類されます(Kuiter and Delbius 2001; Nelson et al., 2016)。

このトゲが1対から2対の場合はテングハギ亜科、1対以上の場合はニザダイ亜科に分けられます。

世界に約 84種、日本から46種が知られています(本村 2024; Fricke et al. 2024)。

ニザダイ科の仲間

ニザダイ科は2亜科に分類されます。この項目では、亜科ごとに特徴や分類を解説します。

テングハギ亜科

テングハギ(撮影:宇野友貴)

テングハギ属のみが含まれ、20種が報告されています(Randall 2001)。主な特徴は、尾鰭の付け根にある1対から2対のトゲ(骨質板)と頭部に突起があることです(Nelson et al., 2016)。

頭部の突起はユニコーンを連想させるため、英名は”unicorn fish“(ユニコーンフィッシュ) です。日本では突起を天狗の鼻に見立てて、テングハギと呼ばれます。

テングハギ(提供:PhotoAC)

テングハギ亜科の雄の頭部突起はメスに比べ、大きくなる傾向があります(Kuiter and Delbius 2001)。雄はこの頭部突起の体色を変化させ、求愛行動や社会行動のために使う可能性が示唆されています(Arai and Sato 2006)。

ニザダイ亜科

クロハギ属、サザナミハギ属、ヒレナガハギ属、ナンヨウハギ属、ニザダイ属からなり約64種を含み(Fricke et al. 2024)、ニザダイ科で最も種の多様性が高いグループです。

ニセカンランハギ(左、クロハギ属)、ニザダイ(右、ニザダイ属)(撮影:宇野友貴)

ニザダイ亜科の仲間には、色鮮やかな種が含まれます。特に、尾鰭の棘周辺の明るい色は警戒色であり(Randall 2005)、「トゲがあるから食べるなよ!」のサインのようですね!

ニセカンランハギ(提供:PhotoAC)

一部のクロハギ属やナンヨウハギ属の仲間には、尾鰭付け根の棘や胸鰭の棘などに毒があるため、注意が必要です(Randall 2001; Randall et al 1996)。

ニザダイ科の仲間を見てみよう!

ニザダイ科の仲間は、美しい体色・模様をもち、その姿はサンゴ礁を彩る宝石のようです。この体色・模様は種ごとに違うため、種を分ける特徴として重要です(Randall 2001)。

ナンヨウハギ(提供:PhotoAC)

私はニザダイ科に魅かれて、魚類の世界を知りました。しかし、ニザダイのファンにはまだ会ったことはありません。

そんなあまり日の目を浴びないニザダイ科ですが、見かけた際には優雅な姿に注目して見ませんか?

(サカナトライター:宇野友貴

参考文献

本村浩之.2024.日本産魚類全種目録.これまでに記録された日本産魚類全種の現在の標準和名と学名.
Arai, H., and Sato, T. 2007. Prominent ornaments and rapid color change: use of horns as a social and reproductive signal in unicornfish (Acanthuridae: Naso). Ichthyological Research, 54, 49-54.
Fricke, R., Eschmeyer, W. N. and R. van der Laan (eds). 2024. Eschmeyer’s catalog of fishes: genera, species, references.
Kuiter, R. H., Debelius, H. 2001. Surgeonfishes, rabbitfishes and their relatives : a comprehensive guide to acanthuroidei. TMC Publishing, 208 pp.
Nelson, J. S. Grande, T. C., and Wilson, M. V. 2016. Fishes of the World. John Wiley & Sons, 752 pp.
Randall, J. E. 2001. Surgeon shes of Hawaii and the World. Mutual Publishing and Bishop Museum Press, Hawaii, 123 pp.
Randall, J. E. 2005. Reef and shore fishes of the South Pacific : New Caledonia to Tahiti and the Pitcairn Island. University of Hawai’i Press, 707 pp.
Randall, J. E., Allen, R. G., and Steene, C. R. 1997. Fishes of the Great Barrier Reef and Coral Sea. Second edition. University of Hawai’i Press, 557 pp.

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宇野トモキ

宇野トモキ

ニザ!

お魚が大好きです。特に、ニザダイ科に魅了されています。みなさまに少しでもお魚の素晴らしさが伝わるれば幸いです。

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