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関東地方で見られる<オヤビッチャ属>の幼魚たち 可愛いけど飼育には向かない

夏の終わりから秋のはじめにかけて、タイドプール(潮だまり)や磯ではチョウチョウウオの仲間や、ヤッコ(キンチャクダイ)の仲間ベラの仲間、そしてスズメダイの仲間といった、たくさんの南方性の海水魚の幼魚を見ることができます。

スズメダイの仲間はチョウチョウウオの仲間などと産卵習性が異なっており、あまり多くの種は見られませんが、それでもオヤビッチャ属の魚は毎年のように関東の沿岸にも姿を現します。

しかしながら、その性格はきつく、持ち帰ると他の魚をいじめ、最悪の場合他の魚が死んでしまう、なんてこともあります。ですからこの仲間の魚を採集しても、持ち帰らないほうがいいかもしれません。

この記事では、海水魚の飼育について扱っています。海水魚は真水(淡水)で飼育することはできません。

また海水魚飼育の設備は淡水魚とは異なるものが必要になります。詳しくは専門誌などをご参照ください。また一度飼育した魚は、海や川へ逃がすようなことのないようお願いいたします。

オヤビッチャ属の魚たちを紹介

この項では、さきほども紹介したオヤビッチャ属とはどういう魚たちか、またオヤビッチャ属に属する魚たちを紹介します。皆さんも見たことのある魚がいるのではないでしょうか。

オヤビッチャ属 Abudefduf はスズキ目スズメダイ科のいち分類群です。ほとんどの種で体側に横帯があり、全長は10センチを超えるものが多く、この科の魚としては大型魚が揃っているといえます。

オヤビッチャ(撮影:椎名まさと)

21種が知られ、インド~中央太平洋に種類が多く、一部の種は東太平洋、大西洋にも生息しています。この仲間は英語でSergeantとよばれ、「軍曹」という意味ですが、集団でいることが多いからか、あるいは体側の横帯を軍曹のシェブロン模様に見立てたのかもしれません。属学名 Abudefduf はアラビア語にちなみます。

基本的には熱帯サンゴ礁に多い魚ですが、日本に分布する9種ではその多くが孵化したあとの仔稚魚が黒潮にのり北上、関東近辺でもその姿を見ることができます。

スズメダイ科の魚は岩に卵を産み付けるタイプの産卵方式なのですが、これではチョウチョウウオの仲間のように卵の状態で広域に分散することは難しくなります。

実際にスズメダイ科の魚は分布が狭い種が多いのです。しかしながらオヤビッチャ属のうち数種は流れ藻など浮遊物につくものが多く、流れ藻とともに北上する魚といえるのかもしれません。九州以北でも日本にすむオヤビッチャ属のうち6種を見ることができます。

関東から九州の太平洋岸に出現するオヤビッチャ属の幼魚

ここでは関東から九州の太平洋岸に出現するオヤビッチャ属の幼魚について紹介しています。

日本にはこのほかにもアミメオヤビッチャ、シリテンスズメダイ、ローレンツスズメダイが知られていますが、これらについては省略させていただきます。

オヤビッチャ Abudefduf vaigiensis

高知県で採集したオヤビッチャの稚魚(撮影:椎名まさと)

オヤビッチャは南方のスズメダイですが、流れ藻などの浮遊物につく習性があるため日本のほとんどの海域から記録があります。千葉県以南の太平洋岸においても毎年夏から秋に姿を見せます。

オヤビッチャの標準和名の由来は、佐賀や壱岐、東北地方などで赤ん坊のことを「びっちゃ」とよび、オヤビッチャとは、「親になっても赤ん坊のように小さく可愛い魚であろう」と榮川省造氏は「新釈 魚名考」のなかで考えています。

オヤビッチャの成魚(撮影:椎名まさと)

英語名はIndo-pacific sergeantといい、インド~中央太平洋域に生息するオヤビッチャ属という意味です。

アメリカ大陸西岸の東部太平洋沿岸、大西洋にはそれぞれよく似た別種が知られています。学名種小名は地名由来です。

暗色になったオヤビッチャ(撮影:椎名まさと)

体側には5本の太い横帯があり、背中にはうっすら黄色が現れることが多いのですが、ごくたまに濃い緑色のものもいます。

ただし採集してすぐは警戒心が強く、暗色であることが多いです。また夜間寝るときなども暗色になる、または色が薄くなることが多いです。

本種によく似たものにシリテンスズメダイや、アミメオヤビッチャといった種も知られていますが、これらの種は九州以北からの記録はありません。

オヤビッチャと他の魚の混泳例(撮影:椎名まさと)

主に動物プランクトンや小型甲殻類等を捕食し、餌付くのもはやく丈夫で飼育しやすい魚ですが、大きいものは性格がきつく他の魚を追い掛け回すこともあります。

できるだけ大きな水槽で、かつオヤビッチャ同様性格が強めの魚と組み合わせるのがベストでしょう。なお、食用としても知られ、塩焼きなどにすると意外なほど美味です。

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椎名まさと

魚類の採集も飼育も食することも大好きな30代。関東地方に居住していますが過去様々な場所に居住。特に好きな魚はウツボ科、カエルウオ族、ハゼ科、スズメダイ科、テンジクダイ科、ナマズ類。研究テーマは魚類耳石と底曳網漁業。

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