みなさんは魚が出てくる夢を見たことがあるだろうか?
釣りをする人が大きな魚を釣り上げる夢をみたり、金魚を飼っている人が金魚の夢を見たりすることはあるかもしれない。筆者はあまり見た夢の内容を覚えていないのだが、魚が出てくる夢を見たことは一度くらいあってもおかしくはない。
今回はそんな「魚が出てくる夢」についての、日本各地に伝わる言い伝えを紹介していこう。
魚が出てくるのは悪い夢かも?
実は日本では、「魚が出てくる夢を見ると悪いことが起こる」という言い伝えが多い。
例えば、福島や新潟、富山、愛知、兵庫といった地域では、「魚の夢を見ると風邪をひく」と言い伝えられている。
「風邪をひく」のはまだいいほうで、「人が死ぬ」(山梨、新潟、静岡、山口)、「川魚の夢を見ると3日以内に人が死ぬ」(京都府北桑田郡)など恐ろしいものもかなりある。
他に魚の夢を見たときに起こるとされる悪事のパターンとしては、「火事になる」(長野県北安曇郡)、「病気の前兆」(沖縄県国頭村)、「腹の具合が悪くなる」(群馬県富岡市)などがある。
また、条件付きで悪事が起こるものとしては、「とった魚を串にさして焼く夢は特に悪い」(神奈川県津久井郡)、「死んだ魚の夢は凶」(秋田、宮城、群馬)、「死んだ魚を捕る夢を見ると死ぬ」(宮城県栗原郡)などがある。
魚の夢を“縁起が悪い”とする文化は葬儀中から忌明けまで魚食を断つ、という仏教の教えがもととなっている、という解釈がある。
「魚の夢は良い夢」とする地域も
魚の夢を見てしまった人は不安になってしまうかもしれないが、安心してほしい。反対に、魚の夢は良いものとする地域もあるからである。
例えば「魚の夢は吉」と伝えている地域がある(群馬、岐阜、鹿児島)。ほかにも「生きた魚の夢は吉」とする地域(宮城、長野)や、「死んだ魚の夢は金運がよくなる」という地域(群馬県吾妻郡嬬恋村)もある。
特殊なものでは、「鱗のある魚の夢はよい」(群馬、新潟、兵庫)というものや、反対に、「鱗のない魚の夢は吉」(広島県賀茂郡高屋町<東広島市>)というものもある。
他にも、「魚の上る夢を見ると仕事が進む」(長野県南佐久郡)、「魚を積んだ入船の夢はよい」(新潟県三島郡)など魚の夢を吉とする言い伝えはたくさんある。
魚の夢を見てしまったら産土様にお参りを
それでも魚の夢を見てしまって不安な人のために、こんな言い伝えを紹介して終わりにしたい。
「魚の夢を見たら産土様にお参りしろ」(長野県北安曇郡)というものである。産土様とは生まれた土地の守り神のことだから、不安な人は出生地の神社にお参りに行くといいのかもしれない。
(サカナトライター:宇佐見ふみしげ)
参考文献
鈴木棠三(2020)、日本俗信辞典 動物編、角川ソフィア文庫