4つの目をもつ魚「ヨツメウオ」。その名前を初めて知ったとき「変わった魚がいるんだな」と驚きました。
しかし、じっくりと観察しても、目は2つしか見当たりません。では、なぜ「ヨツメウオ(四つ目魚)」と呼ばれているのでしょうか?
今回はユニークな生態をもつヨツメウオについて紹介します。
ヨツメウオの秘密は4つの視野
ヨツメウオの特徴は、その名のとおり「4つの目」です。しかし、実際には4つの目があるわけではありません。
ヨツメウオの目には、水平に分かれた特殊な構造があります。視野が上下に分かれているので、水上と水中を同時に見られるのが特徴です。
水面近くで生活するヨツメウオは、枝葉から落下した小さな虫を捕食。また、水中の捕食者から身を守る術も必要です。
そこで、水上と水中を同時に見られるユニークな目が役に立ちます。左右2つの目が上下2つの視野に分かれているから、2×2で4つの視野をもつ「ヨツメウオ」なわけです。
水面付近の生活に適応した姿
ヨツメウオが生息するのは、南アメリカの淡水域やマングローブの汽水域です。川や沼地の比較的浅い水域であるため、水面を滑るように泳ぎながら生活しています。
水面付近で泳ぐ姿を観察してみると、カエルのように飛び出た大きな目が目立ちます。
ヨツメウオは、小さな虫や魚などを食べる雑食性の魚。水面近くで泳ぎながら、枝葉にとまる虫を「落ちてこないかな?」と探しています。
しかし、ヨツメウオは水上ばかりを見ていられません。水中には、大型魚やカエルなどの天敵が潜んでいます。
「エサを探していたら自分がエサになってしまった」なんて事態を防ぐため、水中の様子も同時に把握できる目が必要です。
ヨツメウオの不思議な生態は「目」だけじゃない
ヨツメウオには、短時間であれば陸上に出られる能力があります。胸ビレを器用に使ってペタペタと動き回る様子は、まるで泥や流木にいるハゼの仲間にそっくりです。
しかし、ヨツメウオはハゼの仲間ではなく、カダヤシ目に属するカダヤシの仲間。カダヤシの仲間に見られる「卵胎生」の特徴があり、胎内でふ化した稚魚を産み出します。
陸上に出たり胎内で卵をふ化したりと、多種多様な生き物が生息する南米の河川で生き残るための生存戦略なのかもしれません。
生態を知るほどに、ますます「へんな魚だな」と感じます。
名前の由来を知るのも楽しみ方のひとつ
生き物の名前は、外見や生態の特徴が由来となるケースも少なくありません。名前の由来を意識しながら観察してみると、その特徴に「なるほどな」と思うことも多々あります。
ヨツメウオは、とくにユニークな生態が印象に残る魚です。子どもの頃に水泳用のゴーグルをつけて、水上と水中を半分ずつ見た経験はありませんか? ヨツメウオの視界に広がっているのは、そんな光景なのかもしれません。
(サカナトライター:taku)