動物プランクトン・植物プランクトンの中には、その形を見て納得の和名がついている種類がいくつかあります。
筆者は子どもの頃にプランクトンに関する図鑑を開いたことがきっかけで、プランクトンが大好きになりました。形の美しさ、ユニークさもさることながら、和名のわかりやすさも親しみやすい要素の一つでした。
三日月のようなミカヅキモ、勲章のようだからクンショウモ、鼓みたいだからツヅミモ、星のようにきらきらした形のホシガタケイソウ、唇そっくりのクチビルケイソウ、漢数字の「一」みたいだからイチモンジケイソウ……。
種類によっては直線的なフォルムのミカヅキモや、鼓の形らしくないツヅミモの仲間なども存在しますが、子どもの私でもとても分かりやすい和名のものが多かったのです。
その中でも、ケイソウの一種から新たな知識へと繋がった話をご紹介します。
名前の由来が分からないプランクトンを発見!
分かりやすい和名が多く、大好きになったプランクトン。ところが、その中で「これはどういう意味の名前だろう」と思った種類がありました。
それが、ヌサガタケイソウ。
四角い細胞が時に独特な形状で連なり、印象的な構造をしています。
ホシガタケイソウの「ホシガタ」が星の形という意味なら、「ヌサガタ」はぬさの形ということだろうと想像できました。
では「ぬさ」って何?
そこで、辞書を引いてみました。当時の辞書は残っていないので、現在、自宅にある広辞苑から引用します。
さらに調べると、神社の神主さんが持っている道具を「大幣(おおぬさ)」と言うこともわかり、そこから来た和名だったことを知りました。
ちなみに独特な形をした白い紙自体は紙垂(しで)といいます。
確かに、四角い細胞がいくつも連なっている様は「幣(ぬさ)」を連想させます。わたしはとても納得しました。
プランクトンから新たな知識へ
ケイソウの名前から思いがけず新たな知識を得たというこの経験は、今思い返すと「これは何だろう?」と調べる癖が付くきっかけのひとつになりました。
そして、生物の和名から学びにつながった事例は水生生物以外の生物を含めて他にもあり、都度「名前って大切だな」と感じます。
この世界は分野を超えて緩やかに繋がっている。そして、自分が生きている間に見たり知ったりすることはほんのわずかの事に過ぎないのだと思うと、この世界に対する畏敬の念と同時に、ちょっと知ったからと得意になっている場合じゃないと、背筋が伸びるのでした。
(サカナトライター:atelier*zephyr)