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原始的な形質を残したまま現代を生きる<ヤツメウナギ科> 28年の時を経て分類学的な混乱が解決?

原始的な特徴を残したまま現代に生きるヤツメウナギ科。このグループは長らく分類学的な混乱がありました。

水産研究・教育機構 水産大学校、京都大学、北海道教育大学の研究グループはカワヤツメ属の遺伝学的・形態学的再検討を行い、ミナミスナヤツメウチワスナヤツメを新種として報告しました。

ヤツメウナギとは

カワヤツメ属(提供:PhotoAC)

ヤツメウナギ科は、顎を待たない原始的な脊椎動物「円口類」に分類される水生生物です。

このグループはヤツメウナギ科のほかにヌタウナギ科を含み、日本の魚図鑑においては魚類として掲載されていることが多いものの、研究者によっては魚類として扱わないこともあります。

また、ヤツメウナギ科は原始的な生物として知られるだけではなく、一部の種は北日本において食用とする歴史があるほか、カワヤツメは滋養強壮によいとされ漢方に用いられるようです。

ヤツメウナギ科の分類

従来、日本のヤツメウナギ科は2属5種が知られており、このうちカワヤツメ属のスナヤツメは遺伝的に識別される2種の隠蔽種が分かっています(スナヤツメ北方種、スナヤツメ南方種)。

しかし、この2種は遺伝的に識別されていたものの、長らく学名が確定しておらず、カワヤツメ属の分類は大きな混乱が続いていました。

そこで水産研究・教育機構 水産大学校の酒井治己名誉教授、京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科の岩田明久名誉教授、京都大学大学院理学研究科の渡辺勝敏教授、北海道教育大学国際地域学科の後藤晃元教授らによる研究グループは、分類学的に混乱のあったカワヤツメ属の遺伝学的・形態学的再検討を実施。カワヤツメ属の分類学的な整理をしました。

遺伝的な分類で新種を発見

カワヤツメ属(提供:PhotoAC)

まず、研究チームは成魚(カワヤツメでは若魚)を用いた遺伝的な分類からカワヤツメ属の識別をおこない、分類されたグループの形態的な特徴を調査しました。

その結果、スナヤツメ北方種はLethenteron mitsukuriiであることが判明し、スナヤツメ南方種は未記載種であることが判ったのです。

スナヤツメ南方種の学名はヤツメウナギ科の分類に貢献した八田三郎博士に献名しLethenteron hattaiと命名、新標準和名は「ミナミスナヤツメ」となりました。また、スナヤツメ北方種については新標準和名「キタスナヤツメ」が与えられています。

ミナミスナヤツメとキタスナヤツメはよく似ているものの、ミナミスナヤツメは第1~6鰓孔のそれぞれの間の下側に感丘群があることで、キタスナヤツメと区別することが可能です。

また、ミナミスナヤツメは北海道を除く日本と朝鮮半島に分布しますが、キタスナヤツメは滋賀県以北の日本各地に分布する日本固有種です。

Yamazaki and Gotoがこの2種の存在を明らかにした1996年(Genetic differentiation ofLethenteron reissneri populations, with reference to the existence of discrete taxonomic entities)から、実に28年目にして学名が確定したことになります。

未知の種も発見!?

この研究では、これらのほかに北海道の一部地域のみに生息する未知の種が見つかっています。

この種は成魚の尾びれの形状が「うちわ状」に丸いこと(他種ではひし形)、口盤の歯の角質化が弱く、口の孔の上下にある歯が丸いことが特徴であり、他のカワヤツメ属とは異なる形質を持ちます。

この未知の種を新種として記載し、ウチワスナヤツメと命名。学名はヤツメウナギ科の分類に貢献した佐藤信一博士に献名し Lethenteron satoiと命名されました。

また、本研究ではスナヤツメ科の分類について属レベルで見直す必要があるとし、将来の課題として示されました。

スナヤツメは保全が必要

原始的な形質を残したまま現代まで生きてきたヤツメウナギたちですが、近年は個体数を減らしています。

分類学的な整理が行われたことにより保全対策が進むことを願うばかりです。

(サカナト編集部)

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サカナト編集部

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