大晦日に食べる年取り魚。東日本はサケ、西日本ではブリが一般的ですが、長野県佐久市周辺では、なんと淡水魚の「コイ」を食べるそうです。
昨年12月末、佐久市が主催するコイの料理教室があったので参加してきました。その様子をレポートします。
佐久鯉とは
長野県佐久市では、江戸時代からコイの養殖が始まり、冠婚葬祭の席や正月などの“ハレの日”に佐久鯉を食べる習慣が根付いたそうです。
佐久鯉は千曲川の源流に近い冷涼な水で育てられるため、他の生産地に比べ成長がゆっくりで、その分、しっかりと味の詰まった身になるのが特徴です。品種改良も重ねられ、体高が高く可食部が多いそう。
つまり、大きくて、旨い。現在、養殖コイの生産量では、茨城県、福島県に席を譲りますが、品質の高さでは群を抜いていると関係者は胸を張ります。
佐久市で大晦日に食べる「鯉こく」 市内では長蛇の列も
そんな佐久市で大晦日に食べるのが「鯉こく」です。作ってから1日置くと旨味が増すということで、大晦日に食べるために12月28日頃からスーパーの鮮魚コーナーがコイ一色に染まります。
市内の有名な養殖場では直売もあり、長蛇の列ができるほど。コイにかける情熱には目を見張るものがあります。
かくいう筆者も長野県東部の生まれで、幼いころは地元のスーパーにコイの水槽があって常時販売されていたことを覚えています。
今では常設の水槽を持つスーパーはなくなりましたが、それでもコイ食文化が地元にしっかりと根づいていることを感じます。
佐久鯉はどんな料理法が良いの?
佐久鯉は味がしっかりしているので、シンプルな料理法が好まれます。今回参加した料理教室では、「うま煮」と「アラ汁」の作り方が紹介されました。アラ汁はコイこくとほぼ同じ作り方です。
コイを1尾買いすると、頭と尾、胴を輪切りで5切れにするのが普通なのだそうです。1尾を使い切るために、輪切りをうま煮にし、頭と尾をアラ汁にしましたが、もちろんコイこくでは切り身も使います。
切り身を見ると分かるのですが、販売される際に鱗は落とされていますが、血抜きはされておらず、内臓も出されていません。「血は旨味になる」「内臓こそが美味しい」そうで、昔は内臓から家長に食べさせるのが普通だったのだとか。
この点、海の魚とはまったく違うのが面白いところです。
<鯉のうま煮>の材料とレシピ
コイ切り身(輪切り):5切れ
砂糖:110グラム
醤油:100cc
酒:200cc
水:600cc
みりん:100cc
■作り方
(1)鍋に砂糖、醤油、酒、水を入れ、軽く煮立てなじませる。
(2)コイの輪切りを並べるようにして入れ、軽く煮立てる。切り身は大きく見えるほうを上にして並べると良い。コイが2段以上になる場合は、くっつくのを避けるため1段目を入れて1度煮立ててから重ねる。
(3)アクを取る。白いアクは旨味。茶色いアクだけを取る。
(4)落し蓋をし、さらに煮立てる。煮立ったときに、煮汁が落とし蓋の縁にまで上がるように火加減を調整する。(15~20分)
(5)みりんを入れ、照りが出ててきたら出来上がり。
<鯉のアラ汁・鯉こく>の材料とレシピ
■材料
コイの切り身:5切れ
味噌:100グラム(お玉半分)
酒:100cc
砂糖:4グラム
水:1500~2000cc
※アラ汁の場合は下記も追加
豆腐:1丁(一口大に切る)
ネギ:適量(一口大に切る)
■作り方
(1)鍋にコイの輪切りを並べ、ひたひたになるくらいまで水を加え火にかける。水から始めると魚臭さが出ない。
(2)煮立ったらアクを取る。アクはうま煮同様に茶色のものだけを取る。
(3)アクを取り終えたら火を細め、酒、砂糖、味噌を1/3だけ加え、5分煮込む。
(4)豆腐、ネギを加え、さらに30分~1時間程度煮てできあがり。
鯉のアラ汁・鯉こくは、翌日に食べると味がしみていて美味しさが増します。すぐ食べる場合、ご飯をすりつぶして入れることも。とろみと風味が増しコクが出て美味しくなるのだとか。
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