皆さんは日本の河川に生息している日本淡水魚のことを、どのくらい知っていますか?
「本来は身近な存在であるはずの彼らのことを、もっと世の中の人々に知ってもらいたい!」
そんな想いから『日淡 -NITTAN-』という冊子を制作しました。
日本淡水魚の水族館展示はスルーされやすい?
筆者は小さい頃から魚や生き物が大好きで、小学生のときの愛読書は魚図鑑。絵を描くことも好きだったため、芸術大学へと進学し、とある水族館でアルバイトもしていました。
大好きな魚を眺めている中で、気づいたことがあります。いや、水族館好き・魚好きの僕は元から薄々気がついていました。
「日本淡水魚の展示はスルーされやすい」
僕は水族館の展示を通して、日本淡水魚の生息環境である日本の美しい自然と、そこに息づく様々な姿かたちをした魚たちが大好きになりました。それと同時に、彼らの多くが絶滅の危機に瀕していることも知りました。
芸術大学を卒業するための大学生活最後の課題「卒業制作」を機に、自分の学んだことで好きな生き物と自然に貢献するため「日本淡水魚の存在を知ってもらうための本」を制作することに決めました。
それが、『日淡 -NITTAN- 』です。
日淡は約300種類 “色”と“姿”の視点で迫る
「日本淡水魚」もしくは「日淡」とは、日本在来の淡水魚のことであり、『山渓ハンディ図鑑15 日本の淡水魚』(細谷和海/内山りゅう 山と溪谷社)には約300種が掲載されています。
『日淡 -NITTAN- 』では、中でも関西圏に生息しており、なおかつ全国に広い分布を持っているような、日本淡水魚の中でもメジャーな種類を中心に計32種類を選び、掲載しました。
魚それぞれの特徴を大きく“色”と“姿”の二つに分類し、イラスト・実際の写真・文章を用いて、彼らの魅力を僕なりの視点からお伝えしています。
また、同時に環境省レッドリストの絶滅への評価も掲載し、どのような理由で数を減らしてしまっているのかなども記載しています。
魚種名の表記に漢字表記を取り入れた部分は、こだわりポイントの一つ。日本で用いられる和名は基本的に日本語に由来しているため、ほとんどの魚種名は漢字で表記することができます。
水族館などの説明にはカタカナ表記が多いですが、漢字表記もあると名前の意味をなんとなく類推することができ、その魚の姿や色と一緒に覚えやすい・親しみやすいと考えています。
大きく変わった魚の印象
卒業制作に入る前のミーティングで、同じゼミの学生に<魚に対する印象>を聞いた時の反応は「目が怖くて、生臭くて気持ち悪い」でした。
しかし、学内で卒業制作の展示や物販を行うイベント「卒業制作展」の際に、同じ人に「私はイワトコナマズが可愛いと思った」と言ってもらうことができました。
卒業制作展の物販で30冊ほど用意していた在庫は、会期途中で売り切れに。
また、展示スペースに設置していた感想メモには、「昔、川で見たことのある魚が載っていて、懐かしい気持ちになった」「淡水魚にこんなにも種類がいると初めて知った」「売り切れてしまっていたので残念だった」など多くの嬉しい言葉を書き残していただけました。
なにより日本淡水魚や魚が好きな人だけでなく、多様な人に見てもらい関心を持ってもらえたり、手に取ってもらえたりしたことが何より嬉しかったです。
身近な場所で探してみよう
僕はこれからも日本淡水魚の魅力と、彼らが瀕している危機のことを多くの人に知ってもらえるように活動していきたいと考えています。
日本淡水魚に少しでも関心を持ってくれた人は、ぜひ身近な川を覗き込んでみたり、水族館で探してみたりしてください。きっと、彼らはそこに居るはずですよ。
(サカナトライター:よづる)