年末年始は何をして過ごしましたか?
家でのんびりした人もいれば、年越し旅行をした人もいたと思います。親族と集まったり、初詣に行った人もいるでしょう。
私はもちろん、海に行きました。年明け早々のフィールドワークの狙いは、深海生物やクラゲです。
筆者が年始に行った岸壁採集の様子と、真冬の海でのフィールドワークの楽しさを語ります。
真冬の海で見られる生き物たち
採集を行ったのは年始早々。つまりは真冬、極寒の海です。
実は、そんな真冬の海でしか見られない生き物たちがたくさんいます。
夏場の暖かい時期は南方から来た熱帯魚が見られ、今回のような真冬には様々なクラゲの仲間や深海生物が見られます。運が良ければ、リュウグウノツカイの子どもなどもやってきます。
水温が低いため、普段深海で生活している生き物たちが表層までやってくるのです。
そして、そうした生き物たちは漁港の堤防などから直接採集することができるのです。この方法を、岸壁採集と呼びます。
高い道具は不要な岸壁採集
クラゲや深海生物を採集するとなると、一般人では手に入りにくい高い器具や特殊な技術が必要だと思われがちです。しかし、そんなことはありません。
今回筆者が使用した道具は、<物干し竿にガムテープで柄杓をくっつけただけのもの>です。
これを岸壁から伸ばし、あとは目で見て、クラゲや深海生物を採集します。ただそれだけです。
クラゲや深海生物がいるかいないかは、ほとんど運次第。
岸壁採集には、特に高い器具も必要なく、技術もあまり必要ありません。フィールドワークの難易度としてはかなりハードルが低い方だと思いませんか?
幼魚はわかりにくいから面白い
今回の採集は友人たちと共に行う予定でしたが、私は前乗りして、深夜から岸壁採集をスタート。深夜の方が人がおらず、また、深海生物に会える確率も上がるからです。
早速、魚が獲れました。恐らくトウゴロウイワシの仲間だと思います。胸びれがピンと上方向に立っているのが印象的です。
次の写真の魚も、深夜に採集しました。ボラの仲間の幼魚だとは思いますが、先程のトウゴロウイワシ(っぽいサカナ)と同じく、正直自信がありません…。
というのも、幼魚は大人の姿とずいぶん違うことが多いのです。大人の姿に見慣れていても、幼魚は全く別の姿をしており、見分けるのはまた別の知識が必要になります。
筆者は、残念ながら幼魚にはあまり詳しくありません。よって、「これは○○だ!」と断定するのは怖いので、「○○かな?」に留めておきます。
水汲みバケツでひたすら海水をすくう<海水ガチャ>
今回の採集では、私が“海水ガチャ”と呼んでいる採集もおこないました。
海水ガチャとは、水汲みバケツでひたすら海水をすくって透明ケースに入れ、小さな生物を見つける採集方法。運が良ければクラゲなども手に入ります。
どんな生き物が獲れるかはまさに運次第。ひたすら海水を汲み上げ、生き物が見つかるまでこれを繰り返します。
この方法で、非常に小さい何かの稚魚、動物プランクトンの仲間(たぶんカイアシ類?)が採集できました。マクロ撮影を行えば、彼らが何なのかをきちんと同定できるかもしれません。
このように、ただ海水をすくうだけでも、十分に生き物たちを観察することができます。
深海生物を探すが……
その後も、深海生物を探して水面をキョロキョロ見渡しますが、それらしい影はありません。
この日は真冬であると言うのに、深夜にも関わらず気温は10℃を超えていました。防寒着も全て着込まずとも十分に外にいられるほどです。
もしや?と思い、柄杓で海水をすくって触ってみると、やはりあまり冷たくありません。冷たいことは冷たいのですが、深海生物たちがあがってくる水温となると、もっともっと冷たいはずなのです。
これでは深海生物はあまり見込めないかも……と思いつつ、4時間ほどウロウロと堤防を回ったあと、車に戻って休みました。
朝を迎えてクラゲ採集!
朝になり、友人らと合流し、次の狙いであるクラゲを探します。
深夜採集でも少しクラゲは獲れましたが、今回は明るくなってからの方がクラゲの数は増えていました。
筆者はあまりクラゲに詳しくなく、採集できたものの多くが何クラゲかわからず終いでした。
もっとゆっくり調べればよかった……と少し後悔しています。
初心者でもカンタン! 楽しい岸壁採集
今回の採集に参加した友人の一部は、「水族館でクラゲを見るのは好きだけど、フィールドはハードル高くて行ったことない……」という人たちでした。
しかし、そんな彼らからも「たのしい!」「私でもできる!」「また来たい!」という声が多く聞かれました。実際、上記の写真のように、初心者である彼らもたくさんのクラゲを採集することができました。
岸壁採集は道具も技術も必要なく、海さえ荒れていなければ誰でも体験することができます。時期によって出会える生き物も変わってくるため、どんな季節でも楽しめます。
みなさんもぜひ、岸壁採集を通してフィールドワークへの第一歩を踏み出してみてくださいね。
なお、堤防で採集活動をする際は、ライフジャケットを身につけるなど安全面の配慮をするほか、場所ごとのルール、マナーに十分気をつけましょう。
(サカナトライター:みのり)