冬といえば魚介類が美味しい季節ですね。この季節に旬を迎える魚介類といえば何を思い浮かべますか?
寒ブリ、アンコウ、ドンコ、ホテイウオなど、美味しい冬の味覚がたくさんありますが、今回はマダラをご紹介します。
マダラとは
マダラはタラ科に属し、水深1280メートルよりも浅い大陸棚に生息する大型魚です。日本のタラ科はマダラの他にもスケトウダラ、コマイなどが知られていますが、いずれも水産上重要な種であり北日本を中心に漁業の対象になっています。特にマダラはスーパーへ行けば必ずと言っていい程置かれている魚であり、日本人の食生活に欠かせません。
そんなマダラですが、体側に不規則な斑模様があることが名前の由来だそうです。また、タラは漢字で「魚へんに雪」と書きますが、雪の降る時期に獲れるから、あるいは腹が雪のように白いことが由来と考えられています。さらに「鱈」は日本で生まれた漢字ですが、現在では中国でも使われているのです。
冬に旬を迎える山形県の寒鱈
山形県の庄内地方では1月上旬~2月上旬に獲れるマダラを寒鱈(かんだら)と呼び、産卵期に沿岸(タラ場)に集まってきたマダラを底引き網で漁獲します。特に、鶴岡市の鼠ヶ関港は県内でも有数の水揚げ量を誇るとのことです。
マダラは鮮度の低下が早いことが知られていますが、鼠ヶ関港に所属する漁船は船上で選別した後にそのまま氷と一緒に梱包されているので、鮮度が良いことが特徴です。また、船上で活き締めする場合もあり、市場で通常のマダラよりも高値で取引されています。
山形県で水揚げされるマダラは新鮮なうちに刺身や昆布締めで食べられている他、フライやムニエル、鍋物など様々な料理で食べられています。中でもマダラを使った鍋物は山形県の冬の味覚の代表と言えるでしょう。
山形県の郷土料理どんがら汁とは
「どんがら汁」とはマダラをネギや豆腐と一緒に味噌仕立ての鍋にした郷土料理です。元々、漁師飯でしたが美味しさが広まり、農林水産省の「農山漁村の郷土料理百選」にも選定されています。別名「寒鱈汁」と呼ばれ地元民からも愛されているようです。
「どんがら」の語源はあらを意味する言葉だという説、胴とガラを使うことから「どんがら」と呼ばれるようになった説が有力とされています。
また、「どんがら汁」は一般的な鱈鍋と異なり、内臓(肝臓、白子、胃袋)も使用することが特徴です。使用するマダラは目方が4キロ以上あるものが望ましいとされ、あぶらわた(肝臓)と白子は「どんがら汁」に欠かせません。また、隠し味に酒粕を加えたり、最後に岩海苔をまぶしたりすることもあるそうです。
白子は菊のような形から「きくわた」とも呼ばれ、「どんがら汁」の材料としてだけではなく、鮮度の良い物は生食もされます。このようにマダラは白子が重宝されるため、通常の魚とは異なりメスよりもオスが高値で取引される珍しい魚でもあるのです。
毎年1月になると鶴岡市を中心とした各地で「寒鱈まつり」が開催され、多くの人で賑わいます。特に「鶴岡寒鱈まつり」は東京でも開催されるので、都内の人でも楽しめるイベントになっています。
青森県のじゃっぱ汁
寒鱈を使った郷土料理があるのは山形県だけではありません。青森県にも「じゃっぱ汁」と呼ばれる「どんがら汁」に似た料理があります。
「じゃっぱ」とは青森県で「捨てるもの」という意味で、魚の場合は内臓や頭などのアラを指すそうです。「じゃっぱ汁」に使われる魚は様々ですが、マダラを使ったものが一般的とされています
マダラはスーパーへ行けば必ず見かける魚なので、食べたことがある人も多いのではないでしょうか。その一方で、「どんがら汁」や「じゃっぱ汁」のように内臓まで使用した料理は珍しいかもしれませんね。
(サカナト編集部)