キンメダイといえば深海に生息する高級魚として有名ですが、日本には3種のキンメダイがいるのをご存じでしょうか?
今回は日本に生息するキンメダイについてご紹介します。
キンメダイは3種類いる?
キンメダイは赤い体と金色の眼が特徴の深海魚で、体長50センチになります。眼が金色に見えることが標準和名の由来ですが、これは網膜の下にあるタペータムという構造が光を反射しているためです。タペータムは僅かな光を捉えるためのもので、多くの深海魚に見られる特徴の一つです。
本種は水深200~800メートルの岩礁や大陸棚に生息し、国内では釧路以南の太平洋に分布します。水産上重要な種であり、深場の釣りや底引き網で漁獲される他、国外からの輸入も少なくありません。
また、名前に“タイ”と付くもののマダイやクロダイが属するスズキ目・タイ科と異なり、キンメダイ目・キンメダイ科に含まれます。このようにタイの仲間ではないにもかかわらず“タイ”と付く魚を「あやかり鯛」と呼び、日本は多くの分類群で“タイ”と付く魚が存在するようです。
さらに、国内のキンメダイ科はキンメダイ属とキンメダマシ属に分かれ、前者にキンメダイ、フウセンキンメ、ナンヨウキンメの3種、後者にキンメダマシのみが属します。食用として流通するのはキンメダイ属の魚で、キンメダマシは小型種であることや数がまとまらないことから入荷は稀です。
キンメダイ属の中で最も多く漁獲されるのはキンメダイであり、太平洋沿岸の各地で水揚げがあります。特に有名な産地が、静岡県、千葉県、高知県、伊豆諸島で、特に釣りで漁獲されたものは高値で取引されます。
キンメダイより味が劣る? ナンヨウキンメ
ナンヨウキンメは水深400~600メートルの大陸棚に生息する魚で、キンメダイ同様に底引き網などで漁獲されます。標準和名に“南洋”と付きますが、キンメダイと比較して南方に生息するという訳でもありません。
他のキンメダイ属によく似ていますが、本種は臀びれ軟条数が18~20と多いことや、キンメダイと比較して体高が高いことで区別することができます。体高が高く平らな体型であることから別名「イタキンメ(板キンメ)」や「ヒラキンメ(平キンメ)」とも呼ばれ、こちらのほうが通りが良いことも。
キンメダイより味が劣るとされており、市場ではキンメダイより安価で取引されます。
キンメダイよりも脂乗りが良い? フウセンキンメ
フウセンキンメは水深100~500メートルの大陸棚に生息する魚です。よく似たキンメダイとは体高がやや高いこと、体背面の体鱗が鋸歯状(きょしじょう)になること、後鼻孔(こうびこう)の形が楕円形であることで識別できます。しかし、ぱっと見で両者を区別することが難しく、キンメダイと区別されずに流通することも少なくありません。
その一方、フウセンキンメはキンメダイよりも脂がのっていると言われており、別名で「トロキンメ」または「アブラキンメ」と呼ばれる程です。このことから、フウセンキンメとキンメダイを区別している地域では、キンメダイより高値で取引しています。
一口にキンメダイといっても3種のキンメダイが水揚げされており、それぞれ値段も食味も異なります。見慣れていないと区別が難しいですが、見かけた際に観察・識別してみるのも良いかもしれませんね。
(サカナト編集部)