コブダイという魚を知っていますか。
額に大きな“コブ”を持ち、大きいものは全長1メートルを超え、とても強面な顔で特徴的な見た目をしています。
でも実は、比較的に浅場で観察することができ、浅い波止(堤防)にも時折、姿を現す魚です。
名前に“タイ”がつくけどタイじゃない?
コブダイは額の大きなこぶが特徴の海水魚です。
名前に「タイ」と付きますがタイの仲間ではなくベラ科の魚。ベラの仲間というだけあって生息地も似通っています。
コブダイ(提供:PhotoAC)また、本種はベラの中でも大型になる種であり、大きいものでは全長1メートルを超えるようです。
海藻の生えた岩場や波止の周辺で観察することができ、陸から釣ることもできるので釣りの対象魚としても人気があります。
コブダイの生態
そんなコブダイは動物食性。サザエなど硬い貝類であっても、強靭な顎でバリバリと殻を砕きながら食べてしまします。
また、コブダイは1匹のオスが複数の群れのメスと生活するハーレムを築いており、普段オスは縄張りを徘徊。単独行動をしているように見えますが近くにメスもいます。
実際に筆者もダイビング中にメスの姿を数匹見かけました。
名前にもあるコブの役割は?
コブダイ最大の特徴といえば頭部の“コブ”でしょう。
このコブは非常に重要な役割を持っており、コブが大きければ大きいほどメスにモテるのです。ほかのオスがなわばりに入ってきたときには、その大きなコブで威嚇しコブが大きい方が勝者となります。
コブの大きさが同じだった場合、口を大きく開け、大きな方が勝つという面白いなわばり争いをするとか。この争いはまだ見たことがないでの、ぜひいちど観察してみたいものです。
メスからオスに代わる雌性先熟
コブダイの特徴はコブだけにとどまらず、性転換という印象的な生態もあります。
なんとコブダイは生まれたときはメスで、大きくなるにつれてオスになるのです。この雌性先熟(しせいせんじゅく)と呼ばれる生態は魚ではしばしばみられる特徴で、ベラ科の魚やハーレムを形成する魚で知られています。
コブダイのオス(提供:PhotoAC)また、コブダイの幼魚では体に1本の白い線があり、成体と異なる見た目をしています。そこから成長するにつれてコブが徐々に大きくなり、メスからオスへと性転換していくのです。
コブダイのようにメスからオスに性転換する生物がいる一方、オスからメスに性転換する生物もいます。これは雄性先熟(ゆうせいせんじゅく)といい、クマノミやクロダイがその代表です。
雌雄が入れ替わる不思議
一生でふたつの性を経験できるコブダイ。
魚の世界ではしばしば見られる生態ではありますが、自然界全体で見れば稀有な存在と言えるのかもしれません。
海には多くの不思議や神秘が今もたくさんあるのでしょう。今後もダイビングを通して多くの海洋生物について理解を深めようと思います。
(サカナトライター:ポンた)