肌になじみやすく、ベタつかずに使える人気の美容アイテム「スクワランオイル」。30代半ばの筆者も、洗顔後の仕上げに一滴使うだけで肌がしっとり整うのを実感しています。
実はこのオイル、多くが「深海サメの肝油」から作られていることを知っていますか?
深海で生きるサメの不思議な生態と人を魅了するその油の秘密、そして環境とのつながりをまとめてみました。
スクワランオイルとは?
「スクワランオイル」は、スクワレンという自然由来の油を安定化(酸化しにくい状態)させたオイルのこと。そして、このスクワレンを豊富に含んでいるのが深海サメの肝臓なのです。
サメの肝臓から採れたスクワレンという酸化しやすい成分を、水素を添加する加工をして分子を安定させたものが、私たちが利用するスクワランオイルになります。
無色透明で無臭の万能オイルです(提供:halハルカ)こうして製造されたスクワランオイルは無色・無臭で、肌へのなじみがよく、軽い質感が特徴。スクワレンは人間の皮脂にとても近い成分なので、肌質を問わず化粧水や乳液などの仕上げ用オイルに使われることが多いです。
実際に筆者自身も週に数回の“スペシャルケア”として使っていて、さらっとして使いやすいのにしっかりとしたうるおいを与えてくれることを肌で感じています。
なぜサメから油? 深海での生存戦略が見えてくる
では、なぜそのように優秀な油がサメの体内にあるのでしょうか。
「肝油(かんゆ)」とは、サメの肝臓を原料とした油のこと。サメの肝臓には脂質、特に前述のスクワレンという低密度の油分が蓄えられています。
サメは硬骨魚と違って浮き袋を持たないため、肝臓に蓄えたこの油で浮力を得ています。特に深海に生息するサメはこの仕組みが発達しており、海の表層部から深海までを移動しながら暮らすことを可能としています。
アブラツノザメ(提供:PhotoAC)そのような生態から、深海鮫の肝油はスクワレンの含有量が非常に多く、昔から「肝油鮫(かんゆざめ)」とも呼ばれてきました。日本では「アイザメ」「クロコザメ」などの深海ザメが主に利用されてきた記録があるようです。
良いオイルだからこそ、乱獲と生態系への影響も
人々を魅了するスクワラン/スクワレンの多くは、これまでサメの肝油から作られてきました。しかし深海サメは成長が遅く、数も多くありません。
そしてなにより深海に暮らしているため十分な調査が難しく、全体の個体数を把握するのには限度があります。
サメや海洋環境保全を目的とする、非営利団体シャーク・スチュワーズ(Shark Stewards)はWeb上で、「深海サメの保護のためには漁獲量などの規制をを慎重に検討する必要がある」旨を述べています。
スクワレンという成分は、最初に発見されたのがサメの肝臓というだけで、実は植物界にも存在しています。
オリーブやサトウキビからも抽出できるため、「植物由来スクワレン」は環境にもやさしい代替品として注目されています。
私の肌と海をつなぐオイルの物語
スクワランオイルは、使い心地がよいアイテムで、筆者も長年利用しています。ですが、乱獲の問題などを知ると「手放しで喜んで使っていいものなのか?」と考えさせられました。
浮袋の代わりに油分で浮力を得るという深海サメの不思議な生態は魅力たっぷりなのですが、これからも深海サメが自然界で暮らしていくためには、私たち一人一人の選択が大切だと改めて感じます。
自分が使うものがどんな原料からできているかを知ることで、生活の豊かさも自然の豊かさも、どちらも大切にできるかも知れません。
(サカナトライター:halハルカ)
参考文献
コープ九州-きれいなコープ探検隊 スクワビューティ スクワランオイル