沖縄県の魚といえばグルクンが有名ですが、フーヌイユという魚もよく食べられているのを知っていますか。
特に国頭(くにがみ)村の宜名真(ぎなま)では、フーヌイユが“福をもたらす魚”として知られ、古くから食用として重宝されています。
では、このフーヌイユとは一体どんな魚なのでしょうか。
福を呼ぶ魚<フーヌイユ>
縁起の良い魚といえば、マダイやサケを真っ先に思い浮かべる人が多いと思います。
しかし、地域によっては意外にな魚が縁起物とされていることも少なくありません。特に「福」にまつわる魚に限定すると、福井県のフクラギ(ブリの幼魚)や、下関のフク(フグ)が代表的な例です。
この福をもたらす魚として、沖縄県国頭村宜名真ではフーヌイユという魚が重宝されています。
フーヌイユとは「福の魚」の意
フーヌイユは沖縄県国頭村宜名真で「福をもららす魚(フー:福、ヌ:の、イユ:魚)」として知られる重要な水産物です。
聞きなれない魚の名前ですが、フーヌイユという呼び名は国頭村宜名真の方言。その正体はシイラです。
シイラ(提供:PhotoAC)本種はシイラ科に分類される大型の回遊魚で、沖縄県ではフーヌイユのほかに「マンビキ(万力)」「マンビカー」とも呼ばれてきました。
このマンビキという別名は、シイラが非常に強い力を持っていることを物語っています。
習性を利用した伝統漁法
豊かな海を有した沖縄県国頭村宜名真では古くから漁業が行われてきました。
中でもフーヌイユを獲る伝統漁法は独特であり、この魚が浮遊物の陰に集まる習性を利用した「フーヌイユ漁」。この浮遊漁礁を使った漁法は100~300年前から口承されているといいます。
宜名真(提供:PhotoAC)かつては、浮遊漁礁として竹や木などの自然物が用いられていましたが、現在では塩ビパイプ等の人工物を使った浮遊漁礁へ移行しているようです。
類似した伝統漁法は島根県や鳥取県でも知れており、「シイラ漬け漁業」と呼ばれています。
現代まで継承される保存食
宜名真のフーヌイユは、現在までその食文化が継承されており、身近な魚の一つです。
漁期は9月中旬~12月中旬までで、漁獲されたフーヌイユは煮付けや天ぷら、刺身で食されるほか、古くから伝わる天日干しに加工されます。このフーヌイユの干物は、食料が簡単に手に入らない時代の保存食として伝承されていきました。
天日干しされたフーヌイユは旧正月や祭りなどの行事で食されています。
また、宜名真では文化保存や地域活性化のため、フーヌイユの祭りを断続的に開催。2014年に「フーヌイユまつり」が再開されてからは、集落がフーヌイユを買い取り、干物にしたものが祭りの日までストックされるようです。
ストックされた干物は「フーヌイユまつり」の日に販売されるといいます。
フーヌイユは儀礼にも利用
食文化が継承され続けいているフーヌイユですが、この魚は儀礼にも用いられてきました。
宜名真では旧暦9月1日にイシウガン(石御願)と呼ばれる行事が行われます。この行事ではフーヌイユの頭部にトビイカの煮付けをくわえさせたものをお供え物として提供。
健康、集落の安全のほか、漁師さんたちは大漁を祈願するといいます。
フーヌイユ文化
このように宜名真では古くからフーヌイユを重宝しており、その伝統・文化は現在にまで継承されています。
また近年、開催されているフーヌイユ祭りは、フーヌイユと人の新しい関わり方と言ってもよいかもしれません。この先も宜名真のフーヌイユ文化が継承されていくことを祈るばかりです。
(サカナト編集部)