体の大部分が水でできているクラゲは形状の記録が難しく、標本ではその過程で変形および萎縮していまうことが課題です。
スキャンによるクラゲの3Dデータ化も新たな選択肢として誕生しているものの、大部分が水分から成るクラゲでは、体と周囲の水で密度差がほぼないことから、CTスキャンをしてもコントラストが生まれないことが難点として挙げられています。
そうした中で、一般社団法人日本3D教育協会が主催する「海洋研究3Dスーパーサイエンスプロジェクト」は12月26日、大阪市の施設「Blooming Camp by さくらインターネット」で、最新の3Dスキャンを用いた生きたクラゲをリアルタイムでデータ化する特別実験を開催すると発表しました。
海洋研究3Dスーパーサイエンスプロジェクト
「海洋研究3Dスーパーサイエンスプロジェクト」は、全国から選抜された中学生を対象に開催されています。
このプロジェクトでは参加者が一人1つの海洋生物を徹底的に研究。学者や3D技術者とタッグを組み、モデリングやスキャンなどのデジタル技術を通して研究を行います。
「海洋研究3Dスーパーサイエンスプロジェクト」授業の様子(3D技術基礎)(提供:ソーシャルアクションネットワーク)
2023年には、国内で6例目となるコククジラの全身骨格の3Dスキャンによるアーカイブ化に成功。今回は、最新の3Dスキャンを用いた生きたクラゲのスキャンに挑戦するとのことです。
クラゲの形態記録
体の大部分が水分でできているクラゲ。その体は非常に脆く、水分率は95パーセント以上とも言われています。
ミズクラゲの仲間(提供:PhotoAC)こうした生物の形態を記録することは非常に難しく、標本にするにしてもその過程で変形・収縮していうことが課題です。
スキャンによる記録
様々な分野で活用されているスキャン技術は生き物にも用いられており、クラゲも例外ではありません。
しかし、この手法にも一筋縄ではいかないといいます。
というのも、一般社団法人日本3D教育協会が主催する「海洋研究3Dスーパーサイエンスプロジェクト」はこれまでにCTスキャンによるクラゲのデータ化に挑戦したものの、生きたクラゲの形状データ取得には至っていないからです。
生きたクラゲのスキャンはなぜ難しい?
クラゲのスキャンが難しい理由は前述したクラゲの水分率が高いことに起因しています。
体の95パーセント以上が水でできているクラゲでは、CTスキャンをしてもクラゲ本体と周囲の水でコントラストが生まれず、内部構造や形状を非破壊で捉えることが難しいようです。また、ヨウ素を用いてコントラストを高める実験も行われたものの、生きた状態での撮影は実現できていません。
加えて、クラゲの体が透明ないし半透明であることから、光の反射で形状を捉える光学式3Dスキャナなどでは、光が透過してしまう課題があるといいます。
AI技術を用いた3Dスキャン
こうした知見から、「海洋研究3Dスーパーサイエンスプロジェクト」は生きたクラゲのスキャンを実現すべく、最新のAI技術を活用した3Dスキャン手法に挑戦。
新たな手法では、複数のカメラで同時に対象物を撮影し、映像からAIが3D空間を自動で再構築することが可能。これを駆使して、水中で漂うクラゲの生きた姿をそのままデータ化して記録します。
生きたクラゲの3Dスキャンは世界で初めての挑戦だそうです。
研究分野での活用が期待される
今回「海洋研究3Dスーパーサイエンスプロジェクト」が実施する生きたクラゲの3Dスキャンは、世界で初めての挑戦です。
現状、公開されているクラゲの3Dデータは、固定標本のスキャンやアーティストがモデリングしたものがほとんどだといいます。
この挑戦により、困難とされていたクラゲの形状データをアーカイブ化することに成功すれば、研究をはじめ様々な分野での活用が期待されるでしょう。
また、クラゲ同様に水分率の多い生物についても同じ手法で形態データが取得できるかもしれませんね。
詳しくは、海洋研究3Dスーパーサイエンスプロジェクト公式WEBサイトで確認できます。
※2025年11月29日時点の情報です
(サカナト編集部)