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カツオノエボシも重要な飼料に? 複数の<クラゲ類>が海水魚の主要なエサである可能性が示される

体の大分部が水分から成るクラゲは、これまで餌資源と重要ではないと考えられてきました。

しかし、近年は魚の胃袋からDNA解析によりクラゲが検出されるなど、クラゲが他の動物の主要な餌の1つになっていることが指摘されています。

今回、東邦大学や新江ノ島水族館、黒潮生物研究所などの研究グループはクラゲに付く吸虫を調査し、クラゲから魚へと吸虫が感染していくことを明らかにしました

この研究成果は「Journal of Helminthology」に掲載されています(論文タイトル:Metacercariae infecting seven cnidarian species with their life cycle information including their adult stages in Japan)。

餌資源としてのクラゲ

刺胞動物門に属するクラゲ類は体の大分部が水分でできてきます。

クラゲを食する動物としてマンボウやウミガメが有名である一方、クラゲを餌として利用する動物は限定的と考えられてきました。

ウミガメとクラゲ(提供:PhotoAC)

しかし、近年の研究で、魚の胃袋からクラゲのDNAが検出されたこと、補色実験で魚がクラゲを摂食することが確認されたことかた、クラゲが魚の主要な餌として利用されている可能性が指摘されています。

クラゲに付く吸虫

環形動物門の吸虫は寄生虫の1グループで、幼虫がクラゲ類など様々な動物に寄生することが報告されています。

この吸虫は一生の間に宿主を乗り換えることが特徴です。吸虫は宿主を複数、経由し最終的には海産魚などの脊椎動物(終宿主)に感染します。

その後、成虫になった吸虫は産卵し、終宿主の糞とともに体外へ放出。卵が貝類に感染し、体内でスポロシストやレジアなどの幼虫まで成長します。

アカクラゲ(提供:PhotoAC)

この貝類は第一中間宿主と呼ばれ、レジアなどからはセルカリアと呼ばれる遊泳性の幼虫が出て、次の宿主でメタセルカリアに。このメタセルカリアの宿主が第二中間宿主です。

第二中間宿主が終宿主に食べれることで成虫になりますが、終宿主以外の動物に食べられることもあります。

このケースではメタセルカリアが生き残る場合もあり、この宿主は待機宿主と呼ばれています。このようにメタセルカリアは第二中間宿主、待機宿主を経由し終宿主へ感染するのです。

そのため、メタセルカリアは終宿主の主要な餌に感染します。

種同定が困難

吸虫のメタセルカリアはクラゲ類に付くことがこれまでの研究により判明しています。

加えて、近年の研究によりクラゲ類が海産魚の主要な餌の1つになっていることが指摘されてきました。しかし、どのクラゲ類のメタセルカリアがどの海産魚に感染するのか、ほとんど調査されてこなかったといいます。

また、メタセルカリアは形態による種同定は難しく、DNAを見る必要があるにもかかわらず、吸虫の成虫のDNAについても、十分に調べられていませんでした。

DNAによる解析

こうした背景から、東邦大学、新江ノ島水族館、黒潮生物研究所などの研究グループは、日本沿岸におけるクラゲ類につく吸虫を調査。研究ではカツオノエボシやギンカクラゲなどのニューストンに加え、アカクラゲなどの遊泳生物を含めた8種のクラゲ類が採集されました。

カツオノエボシ属の1種(提供:PhotoAC)

これら8種のクラゲ245個体が解剖され、ギンカクラゲ以外の7種からメタセルカリアが検出されています。

さらに、メタセルカリアが形態とDNA解析などから9種に分けられ、このうちの6種の宿主として海産魚12種が見い出されたのです。

宿主が不明なメタセルカリアについてもDNA解析から、海産魚に寄生する吸虫と近縁であることが明らかになっています。

カツオノエボシが主要な餌になっている可能性

さらに、過去の文献を調査した結果、見出された12種の海産魚のうち10種がクラゲを摂食したことで、感染した可能性が高いとされました。特にシイラとマサバから、クラゲのメタセルカリアと同種の吸虫が4種ずつ見つかっていることから、高頻度でクラゲを食べていると考えられています。

対して、残りの2種(コバンザメとトビウオ科の1種)は、クラゲを摂食したという情報がないことから、ヤムシなどクラゲ以外の動物を食べて感染した可能性があるとされました。

なお、カツオノエボシにおいては寄生していたメタセルカリアが6種と多く、このうち Tetrochetus coryphaenae は10種の海産魚すべてから検出されています。このことから、カツオノエボシが海産魚の主要な餌になっている可能性も考えられています。

クラゲは重要な餌資源

今回の研究により、クラゲ類が海産魚の主要として重要な役割を担っていることが示唆されました。この感染経路は海洋の生態系を理解する上で重要な知見になるとされています。

また、今後さまざまなクラゲ類の吸虫を調べることで、そのクラゲが海産魚の主要な餌になっているかどうか、推定できる可能性があるとのことです。

(サカナト編集部)

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