今年は辰年でタツノオトシゴが日の目を浴びていますが、見た目がより辰に近い魚<ヨウジウオ>を知っていますか?
この記事では、影に隠れた神秘的なヨウジウオの魅力をご紹介します。
ヨウジウオとは?
ヨウジウオはトゲウオ目ヨウジウオ科に属する、楊枝のように細長い体と筒状の口が特徴の魚です。体長は5~15センチメートルほどで体の細さは1センチメートルほどの大きさです。
ヨウジウオ科の最大の特徴はオスが育児嚢を持ち出産することです。ヨウジウオ科の魚はすべて、オスのお腹に育児嚢と呼ばれる袋を持っており、メスは繁殖期になるとオスの育児嚢に卵を産み付け、そこから出産します。
タツノオトシゴを含むヨウジウオ科の魚たちは「オスが出産する魚」として有名ですが、実は卵を産んでいるのは他の魚や動物たちと同じくメスなのです。
巻きつくか巻きつかないか
ヨウジウオ科はヨウジウオ属とタツノオトシゴ属に大別されます。可愛い見た目で有名なタツノオトシゴはヨウジウオの一種。それでは何が彼らを分類するのでしょう。
それは意外とシンプルで「尾で何かに巻きつくか巻きつかないか」です。
タツノオトシゴは、尾部が自由に動き、海藻やヤギ類などに巻き付きます。タツノオトシゴ属は尾がくるんと丸まっているものが多く、ヨウジウオ属は何かに巻き付かず、体単体で海藻などに擬態して過ごしているものが多いです。
神秘的な色模様をもつヨウジウオ
その珍妙な形からタツノオトシゴが日の目を浴びますが、ヨウジウオも神秘的な形や美しさにおいて負けていません。ヨウジウオは独特な色合いや模様が特徴の魚といえます。
『ウォーリーを探せ』のウォーリーのような赤白のシマシマを纏うオイランヨウジ。星空のようなキラキラとした斑点が散りばめられているイシヨウジ。ネオンのようなダイダイヨウジ。ド派手な色合いを持つノコギリヨウジなど……実に多種多様な魚がいます。
擬態が得意なヨウジウオ
さらにヨウジウオは擬態が得意です。海藻に擬態したり、枝に擬態している姿を海中でよく見ます。枝かと思って拾ったらヨウジウオだったなんてことも実際にありました。
ヨウジウオは巻きつかず、自由に泳ぎます。泳ぎのタイプは2種類あり、水中を浮遊する、まさに日本昔ばなしの龍のようなタイプと、蛇のように海底を這うタイプに分かれます。
長い体にある長い鰭をつかって泳ぐ姿は普通の魚とは異なり、どこか不思議で神秘的です。
ヨウジウオは、タツノオトシゴの影に隠れてしまいがちですが、美しく魅力たっぷりな魚です。実は水族館にもよくいる魚なのでぜひ探してみてください。
(サカナトライター・百葉)