陸産貝類は日本列島で高い種の多様性を示すことが知られています。
ムラヤママイマイは新潟県糸魚川市の明星山の岸壁にのみ生息する大型の陸産貝類です。しかし、本種は1976年に記載されて以降、特異な形態を持つことから、乱獲により個体数が激減したことが指摘されてきました。
現在、本種は種の保存法に基づいた国内希少野生動植物種に指定されており、生息内・域外の両側面の保全活動が進めされています。
そうしたな中で、静岡大学理学部の伊藤舜助教と糸魚川ユネスコ世界ジオパークの自然資源保全委員会・吉田一郎委員長の研究グループは、本種の糞中のDNAを対象にメタバーコーディング解析を実施。ムラヤママイマイの食性の一端を明らかにしました。
この研究成果は『Molluscan Research』に掲載されています(論文タイトル:Plant taxa detected in the faeces of the critically endangered Japaneseland snailEuhadra murayamai using chloroplast DNA analysis)。
陸産貝類は日本列島で高い種多様性を示す
陸産貝類は日本列島で高い種の多様性を示すグループです。
一方、日本の陸産貝類の多くは、人為的な環境改変、気候変動、乱獲により絶滅の危機に瀕しています。
ムラヤママイマイもその一例です。
特異な形態を持つムラヤママイマイ
ムラヤママイマイは左巻きで扁平した殻を持つ大型陸産貝類。新潟県糸魚川市の明星山の岸壁にのみ生息します。
本種は1971年に村山均氏により発見された後、1976年に波部忠重博士が新種記載。1976年の記載以降、本種の特異な形態から、乱獲により個体数が激減したことが指摘されてきました。
ムラヤママイマイ(提供:静岡大学)現在、ムラヤママイマイは種の保存法に基づいた国内希少野生動植物種、糸魚川市希少野生動植物保護条例に基づく特別指定希少野生動植物種、糸魚川ジオパーク自然資源の保護・保全の基本方針における貴重・希少野生動植物保護・保全対象種リストに指定されています。
これにより、ムラヤママイマイは原則として、捕獲、採取、殺傷、損傷、譲渡し等が禁止。こうした現状からムラヤママイマイは生息域内・域外の両側面からの保全活動が進められています。
こうした中で研究グループは、保全活動の一環として食性を明らかにすべく、ムラヤママイマイの糞中のDNAを対象にメタバーコーディング解析を実施しました。
11種の植物を検出
解析の結果、ムラヤママイマイの糞中のDNAからススキ、フサザクタ、アオツヅラフジ、クサボタン、ツゲ、キリンソウ、ヤマブドウ、シモツケなど8目11科11属11種の植物が検出されています。
これら11種の植物はいずれともムラヤママイマイの生息地に自生する種。中でも、常緑性の低木であるツゲは高い頻度で検出されたといいます。
糞中から検出された植物が見られる明星山の岩壁(提供:国立大学法人 静岡大学)植物の検出では、夏と秋の季節による違いが見られなかった一方、夏の方が秋よりも検出された植物に個体レベルで大きなばらつきがあったようです。
この結果は、ムラヤママイマイが利用する採餌場所や利用可能な植物由来の物質が季節的に変化する可能性を示すものとなりました。
効率的な保護増殖に貢献
今回の研究によってムラヤママイマイの糞中のDNAから11種の植物が検出され、本種の食性の一端が明らかになりました。
こうした食性の知見は生息域内保全で、生息内の植生を幅広く保護する必要性を示すほか、生息域外保全では効率的な保護増殖に有効になることが期待されています。
(サカナト編集部)