現代の食文化においてクジラ肉は馴染みのない食材ですが、かつて日本では多くのクジラを消費していました。古くからクジラ類を重要な水産資源として利用していたことは縄文時代の史跡からも知られています。
今月9日、水産庁は2019年に日本がIWCを脱退してから初めて、ナガスクジラを捕鯨対象とする方針を示しました。
国内における捕鯨の歴史
日本人は古くからクジラを食用としており、それは縄文時代の史跡や弥生時代の土器に描かれたクジラからも読み取ることができます。
12世紀には手銛でのクジラ漁が始まったとされており、江戸時代になると組織的な捕鯨を開始。この時代になると安定的にクジラを供給することが可能になりました。
江戸時代においてクジラは庶民の味であり、筋肉や皮は塩漬け、腐りやすい内臓は主に産地で食べられていたそうです。なお、江戸時代に出版された『鯨肉調味方』には70種ものクジラの調理方法が記載されています。
その後、日本ではクジラを重要な食料として利用しており、1962年には1人当たりの消費量が牛、豚、鶏を上回ったそうです(鯨食文化-日本捕鯨協会)。
IWCへの加入とその後
日本の食卓を支えたクジラ食文化ですが、日本は1982年、IWC(国際捕鯨委員会)への加入をきっかけに商業捕鯨から撤退。加入後は調査捕鯨によるクロミンククジラ、規制対象外のツチクジラ、オキゴンドウなどを捕鯨していました(日本のクジラ漁について教えてください。-農林水産省)。
時は経ち2019年6月、日本はIWCを脱退。同年7月にミンククジラ、ニタリクジラ、イワシクジラの3種を対象とする商業捕鯨を開始しました。いずれもナガスクジラ科に属する哺乳類で、歯がひげ状であることからこれらを総称してヒゲクジラ類とも言います。
ヒゲクジラ類はひげ状の歯を使いカタクチイワシなど小魚やオキアミを濾して食べているようです。ちなみに、ニタリクジラはナガスクジラに似たクジラであることから「似たりクジラ」と名付けられたとか。
2023年の捕鯨実績はミンククジラ83頭、ニタリクジラ187頭、イワシクジラが24頭。2024年の漁獲枠はニタリクジラ142頭、ニタリクジラ187頭、イワシクジラが25頭になっています(ナガスクジラも商業捕鯨-福島民友新聞社)。
日本では母船式捕鯨業と基地式捕鯨業が行われており、北海道、宮城県、千葉県などが産地として知られています。
水産庁はナガスクジラを対象へ
2019年のIWC脱退後、クジラの資源調査を続けていた水産庁はナガスクジラの資源量が北太平洋で十分であることを確認。今月9日には既に商業捕鯨の対象となっているミンククジラ、ニタリクジラ、イワシクジラの3種に加え、ナガスクジラも商業捕鯨の対象とする方針を固めました(ナガスクジラも商業捕鯨-福島民友新聞社)。
ナガスクジラはミンククジラなどと同様のナガスクジラ科に属するヒゲクジラ類ですが、成熟した大きさは20メートル、重さは40トンにもなる大型種。味が大変良いクジラとして知られています。
5年前に商業捕鯨が再開して以来、ナガスクジラが捕鯨対象となるのは初めてです。今後、私たちの食卓にナガスクジラが並ぶ日が来るかもしれません。
(サカナト編集部)