所謂、珍魚と呼ばれる魚たちは文字通り「珍しい魚」のことで、見た目が珍しい魚もいれば、採集例が少ないことから珍魚と呼ばれる魚もいます。
アカヤガラと呼ばれる魚は食用として流通する魚の中でも、特に変わった見た目をしている魚。漁獲こそ多いもののその姿はまさに珍魚で、一度見たら忘れることはありません。
今回はそんなアカヤガラについてご紹介します。
アカヤガラとは
アカヤガラはトゲウオ目ヤガラ科に属する海水魚。浅海性の魚が多いトゲウオの中では深場の種で水深200メートル以浅に生息します。
ヤガラ科は2024年5月現在、全世界から1属4種が知られており、本邦からはアカヤガラとアオヤガラの2種が記録されているようです。このうち広く流通するのはアカヤガラで、単にヤガラというと本種を指すことが多いでしょう。
真っ赤な体もさることながら著しく長い体が特徴で、ヤガラ「矢柄」の由来にもなっています。また、吻部が長いことから口裂が大きいように見えますが、実際はかなりのおちょぼ口。別名「フエフキ」とも呼ばれており、英語では楽器のコルネットに由来し Red cornetfish と呼ばれています。
本種はトゲウオ目魚類の中でも最大級の大きさを誇り体長は2メートル程。トゲウオ目は小型種が多いため食用になることがほとんどありませんが、アカヤガラは大きくなることから食用として広く流通します。主な漁法は定置網、釣りで、時に定置網でアカヤガラが大量に漁獲されるようです。
小さな個体は比較的安いものの大型ともなると可食部も多く高級魚として扱われています。刺身はもちろんのこと汁物や煮付けで食べると非常に美味しい魚です。
アオヤガラは食用にならない?
同じくヤガラ科に属するアオヤガラはアカヤガラと比較して浅海性が強く、サンゴ礁などごく浅い場所にも出現、幼魚は汽水域にも見られます。
南方では普通種でありながら食用として扱われることは少なく、流通することはほとんどありません。しかし味は悪くなく、中には食べる人もいるようです。なお、アカヤガラとは体色の違いで容易に区別することが可能です。
意外と多いトゲウオ目の魚たち
ヤガラ科が属するトゲウオ目というグループ。あまり聞きなれない名前ですが、実に多くのグループがトゲウオ目に属しています。
ヨウジウオ科の魚はトゲウオ目の中でも大きなグループで、浅海域を中心にサンゴ礁や砂地、汽水域から淡水域に生息。少数ですが深海に生息する種もいるようです。
水族館の人気者であるタツノオトシゴもヨウジウオ科に属しています。
環境省のレッドリストでは絶滅危惧IA類にカテゴライズされているトゲウオ科(ハリヨ、ムサシトミヨ、トミヨ属雄物型)、既に絶滅したミナミトミヨもトゲウオ目の魚たちです。
他にもトゲウオ目にはサギフエやウミテングなど変わった魚たちが多く属しています。
ヘラヤガラとアカヤガラは別のグループ
ヘラヤガラをヤガラ科と間違えてしまうことがしばしばありますが、実はヘラヤガラはヤガラ科ではなくヘラヤガラ科という独立した科を形成します。
本種はインド洋~太平洋に広く分布しますが、ヤガラ科よりも南方系の魚で、日本のヘラヤガラ科は本種のみが知られています。日本では琉球列島や小笠原諸島でよく見られるものの、食用になることはほとんどありません。
ヘラヤガラはヤガラ科とは異なり背鰭の棘が数多く並ぶこと、下顎に髭があることで区別することができます。また、体色にはいくつかのバリエーションがあるようです。
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