海岸での貝拾いは宝探しのようでわくわくしますよね。魅力的な貝殻を見つけた時のときめきは大人になっても変わりません。
生きていなくとも愛でられ続ける貝たちについて、ほんの少し探ってみませんか。
海の宝石<タカラガイ>
タカラガイはタカラガイ科の巻貝の総称。丸みを帯びた形に光沢感のあるツルツルとした表面が特徴的です。
他の貝類に比べても断トツに滑らかな貝殻はまるで作りもののようです。3000年ほど前の古代中国やアフリカでは稀少性から貨幣としても用いられていたそう。
そんな綺麗な貝殻を守っているのが外套膜という膜で、水中でのタカラガイは中からこの膜を伸ばして殻をすっぽりと覆っているのです。一見、イソギンチャクやナマコのようで、私たちが海辺で見かける時の容姿とは全く違います。
外套膜は他の生物が貝殻につかないようにする役目の他、貝殻の成分である炭酸カルシウムを分泌することで貝殻の表面を常に塗り直しています。そうして中も外もツルツルな貝殻をつくっていたのです。
海に春の訪れ<サクラガイ>
サクラガイはニッコウガイ科の二枚貝。桜のような淡紅色をしたこの貝は海辺で手をのばしたことのある人も多いのではないでしょうか。
とても薄く半透明な貝殻は膨らみが浅く平たい形状が特徴的です。
砂浜に打ち上げられた優しい色の貝殻はまるで桜が散ったあとのようで、その美しさから詩歌文学の題材となったり、春の季語として定められたりと人々の心に寄り添ってきました。
水中では、貝殻からは想像出来ないほどに長い水管を伸ばして、海底表面に沈降したデトリタス(有機物の破片)を吸い取って食べています。
海からの贈り物<ルリガイ>
アサガオガイ科の浮遊性巻貝であるルリガイは殻が球状で、名前の通り瑠璃色をしています。薄く脆いため海辺で見つけても欠けているものが多いです。なんとも儚い貝ですね。
軟体はさらに深い瑠璃色で足から浮嚢を分泌、この細かい泡を筏として海上を浮遊しています。貝殻は下にぶらさがった状態でギンカクラゲ類を餌として食べます。そのため海が荒れると多くの個体が海辺に打ち上げられることになるのです。
小さな貝殻から壮大な海を創造しよう
何気なく拾っていた貝殻の砂浜に辿り着くまでの過程を想像してみると、小さな貝殻から壮大な海の音が聞こえてくる気がします。
皆さんもぜひ貝拾いに挑戦してみてください。
(サカナトライター:南あずま)