夏から秋の夜釣りでは、色々な魚と出会うことができます。その中でもハタンポ科の魚は釣れてもあまり喜ばれない魚かもしれません。
しかしながらハタンポは意外と美味しい魚としても知られているのです。今回はそんなハタンポ科の魚たちについてご紹介します。
夜釣りでお馴染みのハタンポ科魚類
夏~秋の夜釣りは色々変わった魚が釣れてくるので楽しいものです。
本命はコロダイ、フエフキダイ類、マダイ、クロダイ、マアジなどですが、防波堤でオキアミを餌に落とし込み釣りをしているとユニークな見た目の魚が釣れることがあります。
それがハタンポ科の魚です。
ハタンポ科の魚は背鰭が1基で、比較的長い臀鰭をもつ等の特徴を持っています。鱗は大きくはがれやすいものと、細かくてはがれにくいものの2タイプがあります。暖かい海、暗い環境に多い魚で、昼間はめったに姿を現すことはありませんが、夜間は群れをなして泳ぎ回ります。
「ハタンポ」という名前の由来は頭が大きい魚とされています。
和歌山県では頭でっかちの子のことを「あたんぽ」、高知ではオタマジャクシのことを「あたん」と呼称していますが、いずれも頭が大きいという意味で、そこから来たものと考えられます。
一方高知県での呼び方「はりめ」は「張目」のことで、眼が大きいことからきているようです。
ハタンポ科の魚たち
ハタンポ科の魚はハタンポ属とキンメモドキ属からなり、どちらの属も日本に分布しています。
日本産キンメモドキ属はキンメモドキのみ、ハタンポ属は8種ほどが知られていますが、そのうち4種が21世紀になって日本からはじめて報告されたか、新種記載されたものです。
ハタンポ属・ミナミハタンポ Pempheris schwenkii
九州以北においてもっともよく見られるハタンポ科魚類がハタンポ属のミナミハタンポで、細長い体に大きなはがれやすい鱗をもっています。
日本においては福島県から琉球列島にかけて、海外では西太平洋に分布しますが、大隅諸島以北のものは尾鰭が黄色みをおびますが、それ以南のものでは茶褐色となり、大隅諸島では両種が見られるとされます。
全長は10センチを少し超えるくらいです。昼間は洞窟や岩の裂け目などに隠れていますが、夜間になると隠れ家をでてすいすいと泳ぎます。
ツマグロハタンポ Pempheris japonica
次に多いのがツマグロハタンポで、これはミナミハタンポよりも細かくはがれにくい鱗を持っています。
古くは単に「ハタンポ」ともされたものですが、ミナミハタンポほど多くは獲れない種で、筆者は三重県尾鷲や南伊勢町の定置網漁業で漁獲された個体を入手したのみで、釣ったことはありません。鹿島灘~九州、沖縄本島、海外では済州島に分布しています。
ミエハタンポ Pempheris nyctereutes
シルエットがミナミハタンポに似ていて、しかし鱗が細かく数が多い、ミエハタンポという種がいます。ミエハタンポは比較的大きく20センチ近くになるものもいます。
写真のミエハタンポは2009年の8月の終わりに高知県の南西部、古満目という場所の波止にぷかぷか浮かんでいたもので、一緒に巨大なモヨウフグも浮かんでいたことから、古満目近辺で行われている定置網漁業で漁獲され、捨てられてしまったものと思われます。
ミナミハタンポよりも大きくて、金色というか、黒っぽいというか、そんな色彩の影響なのかその存在は異質なもののように思えました。分布域は相模湾~台湾、ベトナムにまで及びますが、琉球列島にはいないようです。
そのほか日本産のハタンポ属の魚にはユメハタンポ、ダイトウハタンポ、キビレハタンポ、リュウキュウハタンポ、ボニンハタンポがいますが、これらの種は主に琉球列島や小笠原諸島などに生息するものです。
ユメハタンポは全長20センチを超える大型種で、大隅諸島や琉球列島では食用とされることもあります。
キンメモドキ属・キンメモドキ Parapriacanthus ransonneti
一方のキンメモドキ属の日本産種はキンメモドキのみで、全長8センチほどの小型種です。
テンジクダイ科の魚と似た姿をしていますが、背鰭が1基のみ(テンジクダイ科魚類ではほとんどの種で2基)、臀鰭軟条数が20~21と多い(テンジクダイ科ではもっと少ない)ことなどで容易に識別することができます。
写真の個体は先ほどのミエハタンポと同じく高知県古満目のもので、定置網に入ったものが投棄されたもののようです。鹿児島県の内之浦港では大量に漁獲され、見かけない日はないほどよく見られるとされます。
1
2