今年、長崎県から青森県の日本海にエチゼンクラゲが大発生しました。エチゼンクラゲの大発生は実に15年ぶりだそうです。
エチゼンクラゲは大量発生することにより漁網を破壊することや入網した魚の品質を低下させることが知られており、中には休漁を選ぶ漁業者もいるといいます。
巨大クラゲ「エチゼンクラゲ」
エチゼンクラゲはビゼンクラゲ科に属する大型クラゲです。
エチゼンクラゲの大きさは通常、0.5~1メートル、体重は100キロ程度ですが、中には大きさ1.5メートル、体重は200キロにも及ぶこともあるといいます。これはクラゲの中でも最大級といえる大きさです。
また、エチゼンクラゲの名前の由来は福井県の旧名である越前に因んでおり、福井県で最初に発見されたことからこのような和名が付きました。
なぜ日本海でエチゼンクラゲが大発生するのか
巨大なことで知られるエチゼンクラゲですが、日本海ではたびたび大発生することが知られています。
規模は異なるものの、1995年、2000年、2002年、2003年、2005年、2006年、2009年に大発生し、年によっては漁業に深刻な被害を与えました。
では、なぜ日本海でエチゼンクラゲが大発生するのでしょうか?
実はこれについてはまだはっきりとは分かっていないと言われています。日本海で見られるエチゼンクラゲで、直径5センチ以下の個体が見つかっていないことや、発生が対馬から始まり東に及んでいくことから、少なくとも日本海が発生源ではないと考えられています。
エチゼンクラゲは黄海から来ていた
日本海で大発生するエチゼンクラゲ。
その発生源は長らく謎でしたが、日本、中国、韓国の3か国による調査の結果、黄海が発生源ということが判明しました。また、黄海で大発生したからといって、必ずしも日本海で大発生するとは限らないそうです。
今後は、黄海で大発生する年とない年がある理由や、日本へやってくる仕組みについて調査が求められています。
エチゼンクラゲは食用にならないのか?
巨大かつ大量発生するエチゼンクラゲ。全盛期は一つの定置網に最大5000~10000匹が入網したこともあるとか。
これだけ多く獲れるのであれば食用として活用すればよいのでは? という考えは誰しもがします。
実際、同じビゼンクラゲ科に属するヒゼンクラゲとビゼンクラゲは重要な食用クラゲとして知られており、有明海ではそれぞれシロクラゲ、アカクラゲと呼んでいます。
しかし、現状、様々な企業や研究機関がエチゼンクラゲを使った商品を研究・開発しているものの、未だ食用としての地位は確立されていません。食べれる形にするまでの輸送・加工のコストの他、大量発生が予測不可能なため、加工技術が発達しても供給が不安定という問題点もあるようです。
では、エチゼンクラゲが食用に向かないのか? と言われればそうではありません。
エチゼンクラゲは中国では食用となっており、「沙海月」の名前で日本にも輸出されています。また、現地では生のエチゼンクラゲを食べているなど食用として普及しているようです。
現状、エチゼンクラゲはお金にならないどころか、経済的な損失をもたらす存在です。大発生した地域では駆除活動が行われています。本種を食用するための課題は多いですが、今後の研究で良い活用方法が見つかることを願うばかりです。
(サカナト編集部)
参考
(エチゼンクラゲをベニズワイガニ籠の餌料として用いたときの漁獲について-水産研究・教育機構)
(特集「日本に漂着し厄介者扱いされるエチゼンクラゲ」-くらげ普及協会)
(有明海に出現する海坊主(根口クラゲ類)の生態を探る-西海区水産研究所)
(【異変?】エチゼンクラゲが15年ぶりに大量発生 「1円にもならない…」休漁して駆除作業 ズワイガニ漁にも影響か-Yahoo!知恵袋)