みなさんはバフンウニをご存じですか?
バフンウニは美味しいのはもちろんのこと、「発生」の研究材料にもなる素晴らしいウニなんです。
筆者は愛媛大学理学部生物学科に通っていたため、「発生」の実験などでバフンウニを使いました。今回は、この愛すべき生きもの・バフンウニについて取り上げます。
バフンウニはトゲが非常に短い小型のウニ
バフンウニ(馬糞海胆)(学名:Hemicentrotus pulcherrimus)はオオバフンウニ科のウニです。形や色が馬糞(ばふん)に似ていることから、その名がつけられました。なんだか、ひどいネーミングですよね。
日本では、北海道南端以南、本州、四国、九州の浅い海に生息する小型のウニです。台湾、朝鮮半島、中国沿岸にも生息しています。普通のウニとは異なり、トゲが非常に短いことが特徴です。
初めて見たときは、確かに馬糞っぽくてビックリしましたが、バフンウニの殻はよく海岸に落ちていたので、普遍的に生息しているウニなのだと実感した記憶があります。
旬の季節には、甘みが強くなり美味しいので高価です。たくさん捕獲できないので、産地で消費されてしまい、市場に出回りにくいのが知名度の低さにつながっているのでしょう。
研究材料としてのバフンウニ
バフンウニは普遍的に生息しており、実験対象として優れていたため、古くから研究材料に使われてきました。
特に発生の研究には欠かせないウニで、筆者もKCl(塩化カリウム)を使った学生実験をしました。KCl入りの海水で処理すると生殖腺の筋肉が弛緩し、精子や卵が放出されるので、これらを受精させ、発生の様子を観察するという実験です。
ウニは、短時間で卵割(受精卵の細胞分裂)が進み、典型的な発生段階の様子を観察できます。2日ほどでプルテウス幼生(上図右下)にまで成長するため、取り扱いやすく、ほとんど失敗のない実験ができるのが特徴です。
バフンウニの旬は夏!
バフンウニの旬は夏です。春から夏に向けて繁殖のため生殖腺を発達させます。
小さなウニなので、ムラサキウニのように可食部が大きくありませんが、甘みが濃厚です。
ただし、地域によっては、美味しくないウニも居るため、食用にしないところもあるようです。
バフンウニは潜らなくても、干潮時に大きめの石を裏返すだけで見つかります。もちろん、漁師さんは素潜り漁や見突き漁で捕獲するそうです。
なお、漁業権の問題で、勝手にウニなどを捕獲することは法律で禁止されているため、絶対に海でウニなどを捕獲するのはやめましょう。捕まると高額な罰金(100万円以下の罰)が科せられます。
バフンウニは生食が一番美味しい
バフンウニは基本的に生食が一番美味しいです。ただ、茹でて食べる地方もあります。
美味しく食べられるように加工すれば、食材を無駄にせず、いいことづくめでしょう。
ウニはどんどん高価になっていきますが、たまには自分へのご褒美として、贅沢したいですね。
(サカナトライター:額田善之)