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伊豆で楽しむ<ナイトダイビング>と<ディープダイビング> 暗い海には危険もたくさん

冷たい海水で満たされる海の深場、一寸先は闇の夜の海。そんな海中世界に多くの人は恐れを抱くかもしれません。

しかし、やはりそんな海にもサカナはいます。そして、そのサカナを求めて闇の海に飛び込むサカナ好きもいるのです。

今回は筆者が西伊豆で行ったディープダイビングナイトダイビングの体験談と観察できた生き物をご紹介します。

ダイビング中に起こった“窒素酔い”

そもそも「深い海や真っ暗な海に潜るのは怖くないのか?」と思うかもしれませんが、筆者はあまり恐怖を感じませんでした。それも時間が経つほど怖い感覚は無くなっていきます。これはおそらく、軽度の“窒素酔い”が起こっていたためだと思われます。

私たちが陸上(大気圧下)で吸っている空気の約8割は窒素です。窒素は大気圧下では私たちの身体に何の作用も及ぼしませんが、圧力が高い窒素を吸ってその窒素が血液中に溶け込むと、麻酔作用を及ぼします。これが窒素酔いです。

水圧は水深が10メートル増すごとに1気圧ずつ増えていくので、深く潜れば潜るほど窒素酔いを起こしやすくなります。今回は、ディープダイビングはもちろん、ナイトダイビングも最大水深約37メートルだったため、なおさら窒素酔いを起こしやすい状況になっていたのでしょう。

窒素酔いの症状は思考力低下や注意力散漫などで、これはまさに「お酒に酔う」のと似たようなもの。そうした状態で、普段浅場では見ることのできない生き物たち、夜行性の生き物たちをみることができるのですから、テンションは跳ね上がります。

一方で、窒素酔いで正常な判断ができなくなり、事故にあってしまうケースもあるといいます。テンションが上がって楽しんでいるときほど、冷静な判断を心がける必要があります。

水深約37メートルでのディープダイビング

今回のディープダイビングは水深約37メートルまで潜りました。

深場では太陽光が届きにくくなり、岩や生き物の色も識別しにくくなります。さらに、今回は海の濁りもあったため、なおさら視界が悪い状態でのダイビングに。そのため水中ライトを装備していきました。

比較的深場に生息するオキゴンベ(撮影:みのり)

今回のディープダイビングでの一番の目玉はオオウミウマ。タツノオトシゴ属のなかでも最も大きくなる種です。

「絶対に自分は見つかってなんかいない」という強い自信があるのか、近づいてもサンゴや海藻になりきっていました。

オオウミウマ(撮影:みのり)

ナイトダイビングでの最大の注意点はあのサカナ

ナイトダイビングでも水中ライトは必須です。当たり前ですが、海中に街灯などありません。

そのためしっかり水中ライトを装備して潜りますが、ここで最大の注意点。ライトを水面付近で水面と平行に照らしてはいけません。一体何故でしょうか。

理由はダツです。ダツは光に反応し、突撃する習性があります。実際にダツが突撃して身体に刺さり、亡くなってしまう事件も起こっているほど危険な生物なのです。

ダツ(提供:PhotoAC)

ダツは水面付近を泳ぐため、彼らが突撃してこないように水面付近では必ずライトを下に向けて潜ります。

「いやいやまさかそんな、こんなところにダツなんて……」と思っていたら、次の日の昼のダイビングで水深2メートルくらいの場所でダツが泳いでいるのを発見。私は大丈夫と思わずにしっかり対策して安全に潜りましょう。

夜は寝ている生き物たちを観察できる

寝ぼけながら泳ぐハコフグ(撮影:みのり)

ナイトダイビングでは普段見ている生き物たちの夜の姿を見ることができます。寝ている生き物たちは昼に見た時と体色が違うものもいます。

砂地で寝るカワハギ(撮影:みのり)

また眠っているため動きも鈍く、昼間よりも観察がしやすいです。

砂地で寝るサザナミフグ(撮影:みのり)

活動をはじめる夜行性の生き物たち

また昼には見かけなかった夜行性の生き物たちも出てきます。アナゴの仲間や、写真には撮れませんでしたが、獲物を求めて彷徨うアオリイカもいました。

他のアナゴの仲間と比べ頭部廃部に2つ暗色帯があるハナアナゴ(撮影:みのり)

夜行性の動物たちでひときわ面白かったのがモクズショイです。

クモガニ科に属する節足動物で、身体中に海藻などをくっつけてカモフラージュしています。これで敵から身を隠すのです。

モクズショイ(撮影:みのり)

モクズショイは敵に見つからないことに全てを賭けているのか、動きが非常にゆっくりです。私に見つかって逃げようとしますが、あまりにも足が遅いのです。

モクズショイは必死に逃げているつもりなのでしょうが、こちらから見るとのっしのっしゆっくり歩いているだけにしか見えません。まさに命を懸けて隠れ蓑を纏っている生き物なのでしょう。

危険だけど面白い<深い海>&<夜の海>の世界

深い海、夜の海は危険も伴いますが、同時に生き物たちの貴重な姿を観察することもできます。

ダイビングとなるとハードルが高く感じる方もいるとは思います。そこでおすすめなのが、深い海の生き物を展示している水族館や、ナイトアクアリウムなどのイベントを行っている水族館に行くことです。

ぜひそうした水族館のイベントにも参加してみてください。普段見ることのできない生き物たちの一面をたっぷりみることができますよ。

(サカナトライター:みのり)

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みのり

みのり

センス・オブ・ワンダーを大切に

北里大学海洋生命科学部卒・元水族館飼育員。魚類・クラゲはもちろん、イルカの飼育も担当。非常に多趣味で、生き物観察やフィールドワークはもちろん、映画や読書、ゲームも好き。多趣味ゆえの独自の視点、飼育員視点を交えつつ、水生生物やそれを取り巻く自然環境、文化、水族館の魅力を発信していきます。

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