食用魚としてのギンガメアジ
ギンガメアジは釣り魚として知られるほか、食用魚としても知られています。
小さい「めっき」サイズは唐揚げなどで食べますが、ある程度大きなもの(20~30センチほど)では刺身などにするとかなり美味です。
ただし地域によってはシガテラ毒をもつことがあるとされ、たとえば東京魚市場では全長30センチを超えるものは販売が自粛されています。
太平洋マーシャル諸島ではニラミヒラアジCaranx lessoniiによる中毒例があります。マーシャル諸島では30センチほどの個体を”kubkub”、それより大きいのを”Ikubuj”と呼ぶようで、小さいものは無毒ですが大きいもの(だいたい50センチほど)では強毒とされます。
このCaranx lessonii(ニラミヒラアジ)は現在はCaranx ignobilis(ロウニンアジ)の異名とされています。しかし、檜山・安田(1972)により図示されたニラミヒラアジはロウニンアジよりもむしろギンガメアジのように見え、ギンガメアジ属の分類が混乱していることを伺わせます。
ほかにも南鳥島やサイパン島では同じギンガメアジ属のカスミアジ(別名ドクヒラアジ)などによる中毒例があり、いずれにせよ、熱帯太平洋のギンガメアジ属の大型個体を食するのは注意したほうがよいかもしれません。
(サカナトライター:椎名まさと)
参考文献
榮川省造( 1982)、新釈 魚名考、青銅企画出版、607pp.
檜山義夫・安田富士郎、(1972)、中部西南太平洋有用有毒魚類図鑑、10+266pp.
久新健一郎・尼岡邦夫・仲谷一宏・井田 斉(1977)、インド洋の魚類.海洋水産資源開発センター、393pp.
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中坊徹次編(2013)、日本産魚類検索 全種の同定 第三版、東海大学出版会
日本魚類学会編(1981)、日本産魚名大辞典、848pp.
大塚高雄・野村彩恵・杉村光俊(2010)、四万十川の魚図鑑、ミナミヤンマ・クラブ、東京・いかだ社、164pp.
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東京都市場衛生検査所長通知に基づく指導対象魚介類(東京都通知により措置が定められた魚介類を除く)-東京都保健医療局 東京都市場衛生検査所
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