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「黒潮大蛇行」がもたらす環境の変化 漁への影響は?

通常は日本列島を沿うように流れる暖流として黒潮がありますが、2018年より和歌山県沖で黒潮が南に迂回する黒潮大蛇行と呼ばれる現象が発生しています。この現象は、太平洋側の漁に影響を及ぼしています。

日本に沿って流れる大きな暖流「黒潮」

黒潮の名称の由来はその海水の色にあります。黒潮は海水温が高く、海水に溶け込んでいる栄養素やプランクトンが少なく、透明度が高いので太陽の光を反射しません。青黒く見えるため、それにちなんで黒潮と呼ばれています。

紀伊半島の海(提供:PhotoAC)

黒潮は、台湾島からはじまり、南西諸島沿いに鹿児島、高知、和歌山、伊豆沖と北上しています。東北沖で親潮とぶつかり、潮目をつくり出します。潮目には豊富なプランクトンがすんでおり、黒潮と親潮の魚がそれぞれ豊富なプランクトンを求めて集まることで、好漁場がつくられます。

黒潮と親潮の潮目は三陸沖にあります。この場所は世界有数の漁場であり、ノルウェー沖、カナダ・ニューファンドランド島沖と並んで三大漁場の一つにあげられています。

現在も発生している「黒潮大蛇行」

黒潮大蛇行は、黒潮が南に大きく迂回し、流路が蛇行する現象です。これは黒潮特有の現象で、黒潮と本州の間に起きる大きな冷水渦(冷水塊)を迂回するために起きると考えられています。

黒潮大蛇行が起こっているときの流路は?

通常黒潮は、日本の南から列島を沿うように流れていきますが、冷水渦が発生しているときには、和歌山県の紀伊半島沖で冷水渦を避けるように流れが一度南に迂回します。南へ迂回した流れは東海沖で最南下点に到達します。この地点が北緯32度より南に位置していると黒潮大蛇行と判定されます。

迂回した黒潮は、伊豆諸島付近でもとの流路に戻り、東北沖へ流れていきます。

黒潮大蛇行はいつまで続く?

本記事は2023年12月に制作していますが、この時点でも黒潮大蛇行は続いており、過去最長となる6年5カ月目に突入(2024年2月15日までの黒潮「長期」予測(2023年12月14日発表)-JAMSTEC)しました。

黒潮の流量が増加すれば、流れる力が強まり蛇行せずにまっすぐ進みますが、現在の流量は減少傾向が続いています。この流量は北太平洋の偏西風と貿易風の強さに関係しており、この風が強まれば流量が増えますが、いまだ弱いままで、この大蛇行もしばらく続くとみられています。

漁師を悩ませる黒潮大蛇行

黒潮大蛇行は伊豆半島の磯根漁業に大きな影響を与えます。伊豆半島沖では黒潮大蛇行が一因とみられるカジメ(コンブの一種)の磯焼けが発生し、アワビの漁獲量が減少しています。ほかにも、暖水を好むカツオやマグロといった回遊魚の漁場が遠ざかり、漁獲量の減少につながっています。

一方、静岡県では、通常より沿岸部に近付いた黒潮の影響で、えさとなるプランクトンが漁場から減ります。するとシラスの親魚であるイワシも減り、シラスの漁獲量が減少。2015年には8500トンほどあった漁獲量が、2022年には3436トンまで減少しました。2023年も、9月末時点で2134トンと不漁が続いています(「転職も考えないと…」漁師を悩ませるシラス不漁 「黒潮大蛇行」が漁場形成に悪影響かー静岡朝日テレビ)。

シラス(提供:PhotoAC)

黒潮大蛇行は大雨や台風の発生にも関わっていることから、昨今の水害の多さの一因だとも考えられています。遠い海のことだと思わず、気象情報と同じように、身近な自然として関心を持つことが大切です。

(サカナト編集部)

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サカナト編集部

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