今年10月、埼玉県日高市にある獅子岩で行われた「あゆ漁体験」に行ってきました。
場所は高麗川(こまがわ)。埼玉県の南から日高市のあたりまで流れる荒川水系の一級河川です。
このイベントは「NPO荒川流域ネットワーク」主催の恒例イベントで、例年は8月から9月にかけて行われるのですが、今回は雨で延期となり、10月初旬の開催となりました。
ここで捕まえたオイカワを少しの間ですが、飼育することができ、命のはかなさを学ぶこともできました。
39人であゆ漁体験 仕掛けておいた網には……
NPO法人荒川流域ネットワークは1995年、「任意団体あらかわ流域ネットワーク実行委員会」として発足。その後、水質調査・改善に取り組み始めて21年になる団体です。
今回紹介する「あゆ漁体験」は、子どもたちに日ごろなかなかできない川をめぐる文化体験をしてほしいと、同団体が毎年行っているものです。
当日の参加メンバーは大人19人、子ども20人。ほとんどが他県からの参加でした。
大人が数人がかりで魚を追い込む
我が家の息子は川の両岸を見ただけで大興奮。なぜなら細長い網が橋のように両岸を覆っていたからです。
魚採り用の長い柄の付いた網を持った大人が数人がかりで、その細長い網に向かって魚を追い込みます。
そこからは、さらに子どもも一緒に5メートルほど離れた網へ追い込むのですが、水流もあるので、大勢とはいえ結構大変だったようです。
さて、仕掛けておいた網を見ると……鮎だけでなく他の魚もたくさん入っていました。
子ども達が網の中に入り素手で魚を掴む
網の中の子どもたちは“イモ洗い”の状態で大混雑。
お尻が川の中にすっぽりハマってしまい、大喜びする子、真剣に魚を追いかける子、ずぶ濡れの子どもを抱きかかえて岸辺に上がる親など、みんなが自由で楽しそうでした。
網にはアユをはじめ、カジカやオイカワがかかっていました。
オイカワを捕まえて持ち帰る
筆者の息子はこの時、オイカワを捕まえて持ち帰りました。
帰宅してすぐに自宅のビオトープへ。息子は、どうすればビオトープで水の流れを作れるかを必死で考えていました。
私たち両親も、必要な設備があればと協力して探します。
調べ疲れた頃、息子がベランダのビオトープに出て戻ってくると、明らかに意気消沈。ビオトープから飛び跳ねたオイカワが息絶えてしまっていたのです。
「鱗にたくさん傷がついていたから、戻ろうとしてもがいたんだと思う」と、息子は泣きじゃくりました。
オイカワは淡水魚で、見た目の色が美しく人気のある魚。息子もいつか採りたいと思っていた魚なのです。
トロ船のビオトープを飛び出すほど元気だとは想像が及びませんでした。
川の流れを泳いでいるのですから活きが良い
たった数時間の友達「オイカワ」に、息子は謝っていました。
「きれいな魚」というだけで満足してしまい、川魚の跳力がすさまじいという知識が無かった。飼育体験は子どもの好奇心を満たすけれど、生き物にとっては環境が変わることは大変なストレスであることも再認識しました。
息子がオイカワに謝っていたということは、彼もきっとそれに気付いたに違いないのです。
「だから言ったでしょう? 連れ帰ってもかわいそうだよ」
そう言いそうになるのを堪えて、泣いている息子をあえて見守りました。私が言わなくても、すでに息子はオイカワに大切なことを教わったのです。
子どもはこうやって、命のはかなさを知るのでしょう。それでも、息子はまた魚を捕まえに行きたいと意気込みます。
今回は悲しい思いをしましたが、それでも魚を好きな気持ちは忘れないでほしいです。
(サカナトライター:栗秋美穂)