魚釣りとハオコゼ
ハオコゼは磯採集のほか、防波堤釣りでもお馴染みのゲストです。
オキアミを餌に防波堤のヘチを探っていると、釣れることがよくあります。底が岩礁であったり、海藻が茂っていたり、漁礁やタイヤ、カゴなどの廃棄物があるような場所ではハオコゼも多く居ついています。
また浅いところの魚というイメージが強いハオコゼですが、水深30メートルほどの深さを曳く小型底曳網漁業でも漁獲されることもあります。
釣れたハオコゼはハリ外しなどをうまく使って逃がしてあげましょう。針をのみ込んでしまった個体はハリスを切って持ち帰るようにします。
実はハオコゼは揚げ物などにすると美味しい魚なのです。
もちろん、防波堤に放置するのは絶対にやめましょう。ハオコゼだってかわいそうですし、子どもやイヌなどが踏んで怪我をするおそれもあります。
そして魚の死骸で防波堤や漁港が汚れてしまえば、その場所が釣り禁止(そもそも基本的に漁港は釣り禁止)になるおそれがあります。ですからハオコゼに限らず、持ち帰らない魚はかならずリリースしましょう。
アクシデント発生! 筆者の体験談
さて、筆者がハオコゼを初めて釣ったのは2002年、熊本県天草の漁港でした。
その後2011年には三重県尾鷲でもハオコゼを釣っています。その際に針をはずすときは慎重に、海水で濡らしたタオルの上に寝かせて針をはずしていました。
しかしながら2013年に静岡県御前崎で釣りをしていたところ、ハオコゼに足を刺されてしまい、痛い思いをしました。そのときはタオルの用意がなく、釣れたハオコゼの針を外していたところ、ハオコゼが落っこちてしまい、なんと足に刺さったのです。
当然ながら足に激痛が走りました。私はハオコゼの背鰭か、あるいはほかの鰭に刺されたのかと思ったのですが、よく見てみるとハオコゼの涙骨後方棘が刺さっていたのでした。
フサカサゴ科やハオコゼ科は頭部の棘が大きく目立ちますが、まさかこれほど痛いとは思ってもいませんでした。しばらくずきずきと痛み、歩くことができませんでしたが、夕方までには痛みもひきました。
しかしさまざまな資料を見ても、鰭の毒については触れられていますが、涙骨後方棘の毒性については全く触れられておらず、あの痛さの正体はいまだに私の中では謎につつまれています。
なお、フサカサゴの仲間の場合、刺された際は患部をやけどしない程度の熱いお湯につけておくと、痛みがやわらぐという報告があります。
正しく扱ってハオコゼを観察しよう!
かわいい小型のカサゴのように見えるハオコゼですが、その背鰭棘には毒があり、刺されると激しく傷みます。
しかし扱い方さえ覚えてしまえば、そんなに恐ろしい魚でもありません。
ぜひバケツやプラケースに入れ、鰭を広げる姿や泳ぎ方などを観察してみてほしいと思います。
(サカナトライター:椎名まさと)
文献(書籍及びジャーナル)
尼岡邦夫・松浦啓一・稲田伊史・武田正倫・畑中 寛・岡田啓介編.1990.ニュージーランド海域の水族.深海丸により採集された魚類・頭足類・甲殻類.海洋水産資源開発センター,東京.
荒俣 宏.2007. アラマタ版 磯魚ワンダー図鑑.新書館,東京.
橋本芳郎.1977.魚介類の毒.学会出版センター,東京.
小枝圭太・畑 晴陵・山田守彦・本村浩之編.2020.大隅市場魚類図鑑.鹿児島大学総合研究博物館.鹿児島市.634pp.
中坊徹次編. 2013.日本産魚類検索 全種の同定 第三版.東海大学出版会.秦野.
中村 泉 編.1986.パタゴニア海域の重要水族.海洋水産資源開発センター,東京.
Web文献
Search Fishbase (US Mirror) https://www.fishbase.us/
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