2024年も年末に差し掛かりますが、皆さんはいかがお過ごしでしょうか。
突然ですが、今年は個人的にもとても充実した1年でした。
サメについての趣味を本格的に稼働し始めた年でもありましたし、Webメディア『サカナト』のライターとして活動し始めたのも今年6月でした。
学校生活も佳境に入りつつあるので、これから始まる研究室や卒論、就職活動を憂いながらも充実した毎日を送っています。
そんな毎日の中で、ライターとして記事を書かせていただいているのも、サメに会うために水族館へ行ったりしているのも、とてもやりがいを感じています。
でも何より、「やってよかった~!」と強く感じているのは、顎骨標本づくりです!
サカナトライターとしての出発
初めて顎骨標本づくりをしたのは、たまたまホシザメの頭が懐に転がり込んできたタイミングで、単なる思いつきでした。
ちょうどライターとして活動し始める最初の記事のテーマをどうするか悩んでいた時期に、友人が「旅先でホシザメを譲り受けたけど、いる?」と私に連絡をくれました。
その時期の私は、サメ好きではあるけど、魚に関しての経験の種類としては「水族館で見る」ぐらいしかなかったため、実際に触れられるサメが急に手に入ることにびっくり。
とにかく嬉しくて、「これだ!」と確信。友人にはふたつ返事で「くれ!」と返事しました。
しかし、サメが手に入るのはいいものの、「観察して、後は写真に納めることができればいいな」くらいにしか考えていませんでした。
しかし、果たしてノープランでサメを受け入れていいものなのか……?という懸念も出はじめ、せっかくならば身近な環境の中では貴重であるサメを「どうにかして手元に残したい」という気持ちが生まれました。
どうにかして手元にサメを残したい
何か手元に綺麗に残す方法はないかなと悩んでいた時、SNSで別のサメ好きさんの「標本制作は楽しいよ!」という投稿を発見。
サメの標本といったら、剥製標本や液浸標本などよりも、口周りの骨のみを残して加工する顎骨標本をよく見てきました。
しかし、一個人が顎骨標本を保管しているのを見たことがある訳ではなく、水族館や博物館で見るものというイメージがあったので、素人が手を出すことができるようなものではないと思っていました。
でも、よくよく調べてみると、標本作成は案外簡単で、「骨から身を外して薬剤できれいにする」というステップだけで完成するらしいということに気が付きました。
ド素人がつくることのできる標本の完成度なんてたかが知れているとは思いますが、特殊な機材や薬剤を必要とせず、資格なども必要なわけではないらしい……。「できないことではないのなら、やってみるしかない!!」と決意し、いただいたホシザメを標本にしようと決めました。
反省が多いホシザメの標本 でもお気に入り
かくして私は、ホシザメを素人ながら顎骨標本に加工し、その経験を記事におこすことで、サカナトライターとしての本当のデビューを果たしました。
しかしふとした瞬間に改めて標本を見て、気が付いてしまいました……。
なんかこの標本……不格好!?
ホシザメの標本は、半年経った今思い返してみても、かなり作りやすかったような気がします。
サメでありながら、サメっぽいイメージの代表格でもある「狩りに敵した鋭い歯」が生えていないのも、そんな一因です。
作業中にがしっとサメ顎骨掴んでも、痛い思いをすることはないですし、ホシザメ自体の体が小さくて大規模な作業にはならなかったので、体力的にも余裕がありました。小型のサメだったので初心者としてはびっくりしがちな寄生虫もほとんどいませんでした。
ですが、なんといってもホシザメは臭くなかった! それが一番大事です……。
食用としても重宝され、身が美味で有名なホシザメだからなのか、死んでからかなり日が経っているにもかかわらず、若干感じる磯の香り以外には何も感じませんでした。
そんなに作業のしやすい要因があったのにも関わらず、やはり反省点が多すぎる標本だなぁ……と今は思います。
時間が経っていくと、いつの間にかこんなヒビや亀裂が発生してきたり……。
展示してみた時に、左右のバランスが悪いのでぐらついたりしてしまいます。
サイズ感も相まってかなりお気に入りの標本ではありますし、自分の手でサメをひらいてみることで得られた知見も多かった。とっても有意義な体験でした。
ですが、やはり標本は「骨から身を外して薬剤できれいにする」だけではないんですね。最初から薄々そうなんじゃないかとは思っていましたが、改めて完成度を確認して思い知らされました。
反省の多い標本 続編としてアオザメにチャレンジ
ホシザメの顎骨標本を作って調子に乗った私は、1回経験しただけにも関わらず、愚かにもホシザメの何倍も大きな体を持つアオザメに手を出してしまいました。
個人的に参加するサメのイベントがあり、自分の作った標本をイベント会場の展示品として提供できるかもしれないから、という下心での挑戦ではありましたが、なんでもトライしてみよう! という挑戦心が奮ってしまった故の行動でした。
今思うと愚行でした……。
SNSで知り合った東北の漁師さんにお声がけさせていただき、アオザメの頭を購入して早速家のベランダに搬入しました。
死んでからさほど日が開いていたわけではないのに、かなり強烈なにおいです。よく言えば魚の干物などにも感じられるような圧倒的な“魚臭”。悪く言えば“魚介類の腐臭”です。
サメの生態的特徴のひとつに、強いアンモニア臭があります。サメやエイに分類される種の魚たちは、海水という濃い塩水に住みながらも体内の塩分濃度を一定に保つため、体内で生成されたアンモニアを尿素に変化させる仕組みを持ちます。
サメが死ぬと、生成されたアンモニアが体内にたまり続けるとされ、言ってしまえば「尿臭く」なると言われています。
今回のアオザメは尿臭いと感じることはなかったのですが、やはり大きな生き物はそれなりの匂いがするなあ……と思い知らされました。
スケジュールに余裕がなく、体力的にも解体をなかなかスタートできないほど疲弊していたので、除肉の作業はかなり切羽詰まっていました。
もう体が限界……だけどここで今日の作業を終了し放置してしまったら、部屋がめちゃくちゃサメ臭くなって寝られない……!
そんな状況での作業だったので、せっかくのアオザメも観察のみで写真に残せるほどは余力がありませんでした。もったいないことした……。
除肉作業で手に怪我 「やっぱりサメってすごい」と再確認
実際にできたものがこちらです。
骨だけになってもまだまだ臭いので、標本をしまっておくためのケースを購入。口の開き具合も、乾燥が終わった後に「これなんか口開きすぎたかな……?」と気付いてしまいましたが、その時にはもう固定されていて手遅れでした。
自分としては、「最大限口が開いていた方が観察もしやすいし、迫力も出るからいいだろう!」と思っていたのですが、接合部の軟骨の可動域を限界まで使ってしまった結果、自然界ではこうはならないであろう、不自然な縦長の口になってしまいました。
また、筋肉質な体であるため、固い筋や筋肉の除肉作業は本当に骨が折れ、手を保護するための手袋を外して片付けをしていた際に、歯にあたってざっくり指を切ってしまいました……。
完全に油断していた私が悪かったのですが、やはり「長く鋭いアオザメの歯は肉を切り裂くのには最適なんだ」と納得もしました。
今は完全に回復しましたが、一時は眠れないほど痛みが続いて、縫うぐらい傷が深いとも言われました。それ以外にもほんの少し歯に当たったり、かすったりするだけで、かなりの数の小傷をこさえてしまったのです。
やっぱりサメってすごいんだな~!と再確認する出来事でもありました。
あぁ素晴らしきサメライフ
2024年の私は、初めて自分からサメに関わりにいくことができました。
記事を書くために水族館などへの取材をしたり、漁師さんとコンタクトをとったりするという面でも、元々内気だったはずの自分が嘘みたいに楽しく人に関わっていけたし、活動を見守ってくださる方もだんだん増えたように思います。
これも全部、サメのおかげです。
標本づくりもそこそこにしつつ、これからもどんどん新しい事に挑戦していきたいです。
その際にはまた記事にして、みなさんにより良いサメの魅力を伝えていけるように精進します!
皆さんも、良いお年をお過ごしください。
(サカナトライター:しょうじ)