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小笠原諸島・父島で出会ったサカナたち 独自の進化を遂げた<東洋のガラパゴス>

2024年も年の瀬です。皆さんは今年、どのようなサカナとの出会いがありましたか。

筆者には忘れられない思い出があります。それは小笠原諸島父島への旅で出会ったサカナたちです。

小笠原諸島は様々な希少生物たちの宝庫で、サカナも例外ではありません。

そんな父島で出会ったサカナや水生生物たちとの思い出を綴ります。

小笠原諸島には多数の希少生物が生息・回遊

小笠原の景色(撮影:みのり)

小笠原諸島は一度も大陸と繋がったことがない完全な「海洋島」で、希少な生き物たちがたくさんいます。

偶然にも小笠原諸島に流れ着き、独自の進化を遂げた固有種や固有亜種のほか、シロワニやザトウクジラといった希少なサカナや水生生物たちも多く生息・回遊してきます。

陸を跳ねる魚<ヤセタマカエルウオ>

今回の父島への旅の中で出会ったサカナのうち、特に印象に残っているのはヤセタマカエルウオです。

八丈島や小笠原諸島にのみ生息する魚で、元々「タマカエルウオ」という和名でしたが、数年前に別種のヤセタマカエルウオであると認められました。

ヤセタマカエルウオ(撮影:みのり)

この魚は、でありながら陸で生活し、水に入ることはほとんどありませんそれどころか、波しぶきが来るとぴょんぴょんと跳ねて逃げていきます。

まず初めに、昼間に彼らが生息しているというポイントに行きました。しかしながら、ヤセタマカエルウオを見つけることはできませんでした。

昼間はヒトを視認しやすく逃げているのか、それとも他の場所にいるのか、理由は分かりません。

激しく打ち付ける波打ち際でじっとしている(撮影:みのり)

夜にもう一度同じ場所に行くと、ヤセタマカエルウオがいました。東京都江戸川区にある葛西臨海水族園で常設展示しているため、存在は知っていたのですが、野生の個体を見るのは初めてでした。

水族館の個体と違い警戒心がとても強く、近づくとすぐに逃げてしまいました。そのためカメラの望遠機能を使って遠方からヤセタマカエルウオを探し、離れて撮影しました。

夜の方が見つけやすいことや警戒心がかなり強いことなど、水族館だけでは見つけられない彼ら本来の生態を目の当たりにしたのです。

“ココ”でしか見られない<オガサワラベニシオマネキ>

シオマネキというカニの仲間を知っていますか?

オスが大きなハサミを持っていて、そのハサミを振ることでメスに求愛するという変わった生態を持っているカニです。

そんなシオマネキの仲間は、小笠原諸島父島にも生息しています。名をオガサワラベニシオマネキと言います。

オガサワラベニシオマネキは世界中でこの父島にしか生息しておらず、さらに生息している場所も非常に限られているという、とんでもない希少種です。

オガサワラベニシオマネキのオス(撮影:みのり)

もし現在生息している場所がなくなってしまったら、一気に絶滅してしまう恐れもあるでしょう。そのため、本記事でも彼らの生息地の情報は伏せておきます。

<オガサワラベニシオマネキ>は非常に警戒心が強い

ヤセタマカエルウオと同じく、オガサワラベニシオマネキたちも非常に警戒心が強いです。

巣穴を見つけても、人の影や気配を感じると一瞬でいなくなります。遠方から望遠カメラを構え続け、巣穴から出てきたところを写真で捉えました。

ヤセタマカエルウオもオガサワラベニシオマネキも、まさに小笠原諸島だからこそ見れる生き物たちです。野生の彼らを観察できたということだけでも、小笠原を訪れた甲斐がありました。

水鳥も多数飛来 小笠原諸島では“渡り”を行わない鳥も

小笠原周辺には水鳥たちもたくさん生息・飛来します。

ムナグロという鳥は日本本土にも飛来しますが、冬季には東南アジアなどへ「渡り」を行う渡り鳥です。しかし、小笠原諸島は一年を通して温暖なため、冬季でも渡りをせずに越冬するそうです。

ムナグロ(撮影:みのり)

筆者が訪れたのは真冬の2月ですが、この時の父島の気温は約20℃前後。ムナグロは当たり前のようにたくさんいました。

また、彼らはナワバリを持つそうなのですが……たくさん密集していました。写真を撮影したときには、てっきり仲良しなんだなとばかりに思っていましたが……。

翼を広げると140センチの巨鳥 アウトドアブランドのロゴにも

小笠原諸島には、アカアシカツオドリという鳥もいます。アウトドアブランドCHUMSのロゴにも使用されている鳥です。

翼を広げると140センチにもなる巨鳥ですが、身体は非常に軽いそうです。

アカアシカツオドリ(撮影:みのり)

私がアカアシカツオドリを撮影したのは小笠原に向かう船上で、周りには島ひとつありません。つまり彼は何10キロ・何100キロと離れた島からここまで飛んできたのです。そんな遠距離を飛ぶために、身体は軽くできているのです。

翼はほとんど羽ばたかせず、上手く風に乗って飛んでいました。また海上付近では船の波に押しのけられてトビウオが飛び回っており、そのトビウオを狙って時折急降下していました。

真っ白な身体にくりくりの目、翼の淵は黒く、くちばし回りも赤と青が混ざった不思議な色をしています。かっこよさとかわいさを兼ね備えた、魅力のある鳥だと感じました。

素晴らしき小笠原のサカナたち

さすが“東洋のガラパゴス”と言われているだけあり、小笠原諸島の生き物や環境の多様さには度肝を抜かれます。魚や水生生物だけでも固有種や希少種が多く、素晴らしい魅力に溢れていました。

今回は主に小笠原における水生生物たちとの出会いを記しましたが、それ以外にも小笠原の魅力はたくさんあります。

筆者個人作成のレポート(撮影:みのり)

筆者は、その小笠原の魅力をレポート「Darwin’s Bonin Island Report」としてまとめ上げました。小笠原が持つ魅力と共に、抱える環境問題等を少しでも広めたいと考え、作成したものです。

小笠原に興味を持った人には、ぜひとも実際に現地を訪れてみてほしいと思います。

2024年も素敵な一魚一会に恵まれました。来年はいったいどんなサカナたちと出会えるのか、今から楽しみです。

(サカナトライター:みのり)

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みのり

みのり

センス・オブ・ワンダーを大切に

北里大学海洋生命科学部卒・元水族館飼育員。魚類・クラゲはもちろん、イルカの飼育も担当。非常に多趣味で、生き物観察やフィールドワークはもちろん、映画や読書、ゲームも好き。多趣味ゆえの独自の視点、飼育員視点を交えつつ、水生生物やそれを取り巻く自然環境、文化、水族館の魅力を発信していきます。

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