春の風物詩の一つでもあるサクラエビ。
体長5センチにも満たないこのエビは、日本と台湾で重要な水産資源として知られています。
この日本と台湾のサクラエビは異なる集団と捉えられている一方、最新の分子生物学的な手法による研究は行われていなかったそうです。
そんな中、東京大学大気海洋研究所の平井惇也講師らによる研究グループは、遺伝子解析により日本と台湾間のサクラエビが遺伝的に交流していることを明らかにしました。
<サクラエビ>は駿河湾以外にも生息

駿河湾で多獲されるサクラエビ(Lucensosergia lucens)は、体長5センチにも満たない外洋性のエビです。
本種は「駿河湾の宝石」とも呼ばれることから、駿河湾のみに生息するエビと思われがちですが、実は台湾でも漁獲があり、台南の東港ではサクラエビが“東港三宝”の一つに数えられています。
また、日本国内においても、サクラエビは複数の地域で見られ、駿河湾の隣に位置する相模湾のほか、東京湾、長崎県沖の東シナ海などで確認されているようです。
謎が多い<サクラエビ>
日本と台湾で漁獲されているサクラエビですが、意外にも科学的知見に基づいた調査は行われておらず、その生態は謎に包まれています。
そんな中、東京大学大気海洋研究所の平井惇也講師と東海大海洋学部の西川淳教授らによる研究グループは台湾農業部水産試驗所と共同研究を行い、日本と台湾におけるサクラエビの遺伝的交流の実態を調査しました。
サクラエビは黒潮で分散する?
最新の分子生物学的手法を含めた複合的な解析により調査を実施し、ゲノム上の一塩基多型を効率的に解析できる「MIG-seq法」を用いた集団遺伝解析では、日本と台湾のサクラエビが混ざり合い、明確なグループが形成されないことが判明しました。
また、ゲノムスキミング法によってミトコンドリアゲノムの全長を取得したところ、駿河湾と台湾で明確な遺伝的グループは形成されなかったようです。

さらに、一塩基多型のデータをもとに現在の移動度の推定を行ったところ、台湾から日本への移動が大きいことも判明し、黒潮がサクラエビの分散に大きく関わっていると考えられました。
求められる両国協力の研究・資源管理
このことからサクラエビが台湾から日本に移動していることが明らかになり、本種の資源管理には両国の協力が必要不可欠であることが示されました。
現在、サクラエビの資源管理は日本と台湾で独自に行われていますが、今後は両国で協力関係が構築されることが期待されています。
(サカナト編集部)