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田んぼで観察できる<小さな生きものたち>3選 水辺を覗くと広がる小さな世界

昨年から現在に至るまで、コメの価格上昇が社会問題となっています。政府は備蓄米の放出を決定しましたが、価格が下がるのはまだ少し先になりそうです。

さて、今年もいよいろ春本番を迎え、来年度のお米づくりが始動。田んぼには、これから初夏にかけて水が張られることになります。

1週間も経つと、水を張った田んぼには謎めいた不思議な姿の生きものがたくさん発生するのを知っていますか?

そんな田んぼに生息するエビのような生物や貝のような生きものたちに注目。この春から初夏は、ぜひあなたも田んぼの生きものを観察してみてはいかがでしょうか。

エビのような形をした<カブトエビ>

カブトエビは、カブトエビ科(Triopsidae)に属する甲殻類の総称で、Triops属とLepidurus属を含みます。

カブトエビはエビのような形をしていますが、実はエビではありません。鰓脚類(さいきゃくるい)という鰓(えら)をもった付属肢を持つ甲殻類で、ミジンコやホウネンエビ、カイエビなどの仲間です。

アメリカカブトエビまたはタイリクカブトエビ(撮影:額田善之)

Triops属は分類が困難であり、顕微鏡で尾節に生えているトゲの数や分布状態でしか見分けらません。

日本にはアメリカカブトエビ(学名:Triops longicaudatus)、ヨーロッパカブトエビ(学名:Triops cancriformis)、タイリクカブトエビ(学名:Triops sinensis)、シラハマオーストラリアカブトエビ(学名:Triops strennus)の4種が生息しているようですが、タイリクカブトエビ(アジアカブトエビと呼ばれていた)以外は全て移入種です。

一方、Lepidurus属については、日本に生息するという報告はなさそうなのですが、実際は移入しているかもしれません。

Lepidurus属かもしれないカブトエビ(撮影:額田善之)

筆者が岡山市東区で2016年6月に見つけたカブトエビには、Lepidurus属に特徴的である尾節のヘラ状突起がありました(上記写真の赤矢印部分)。

動画でも確認したのですが、どうもゴミなどではなさそう(別の写真でもハッキリとはしないのですが、突起が確認できました)。もしかすると、新発見なのかもしれません。

大量発生すると豊作?<ホウネンエビ>

ホウネンエビBranchinella kugenumaensis)は「豊年蝦」と書きますが、これは、ホウネンエビが大量発生した年は豊作になるという民間伝承によるもの。カブトエビと同じく、ホウネンエビも鰓脚類の一種です。

田んぼに水が入るとたちまち孵化して、カブトエビやカイエビなどとともに泳ぎ回り、たまにカブトエビやオタマジャクシに捕食されます。2センチほどの大きさの生き物です。

色違いのホウネンエビ(真ん中は抱卵したメス)(撮影:額田善之)

不思議ですが、色違いの個体がおり、上記写真でも薄青色、緑色、ベージュと3種類のものが写っています。理由は明らかになっていないようですが、これも遺伝子のなせる業なのでしょうか。

とにかく形も泳ぎもかわいくて癒されます。短い生命サイクルで一生を終える生き物ですが、卵が乾燥に強く、また次の年も発生するのは生命の神秘ですね。

2枚貝のようなカイエビの仲間

カイエビの仲間は世界で200種類ほどいると言われています。日本でもいくつかの種類が生息しています。

カブトエビなどを撮影中にもぞもぞしている1ミリ小さな生物がいたので写真を撮ってみると、2枚貝のようだけど、なんだか様子が違う感じでした。

カイエビの子ども(撮影:額田善之)

別の年にも、殻が黒っぽくなり、スイスイ泳いでいたものがいましたが、これはかなり成長した個体だったのでしょう。形状から、恐らく、殻ができたカイエビかヒメカイエビの子どもだと思われます。

もしかすると、ドブシジミの幼生かもしれません。

生命の神秘を感じる鰓脚類の生き物たち

鰓脚類には、生命の神秘を感じます。

田んぼが代々受け継がれ、脈々と米作りがつづいているからこそ、観察できる生きものたち。

コメ不足が続く昨今ですが、田んぼと小さな生きものたちを残してほしいものですね。

(サカナトライター:額田善之)

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額田善之

額田善之

人生を楽しもう!

愛媛大学理学部生物学科卒の生粋の生き物大好きライターです。特に魚が好きで、子どもと水族館巡りや釣りを楽しんでいます。オートバイで旅をして産地の珍しい魚を食べるのも趣味です。旅行や納豆の記事をよく書きますが、今回から水生生物についても執筆していきますので、よろしくお願いいたします。

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