流れの緩やかな川の底に、見慣れない魚が動きました。とっさに網を入れたけれど、そこにはもういない──それが筆者とカマツカの最初の出会いです。
筆者のよく行く川では、なかなか網に入らず憧れの魚になっていたカマツカ。ショップで見かけると、底にへばりつくようにして動かない姿が妙に印象に残ります。
そんなカマツカには興味深い生態があるのです。
<カマツカ>は川底でひっそり暮らす淡水魚
筆者が住む地域の川でガサガサをしていると、ドジョウやヨシノボリ、オイカワなどいろんな魚に出会えます。
しかし、なかかな網に入ってくれない魚がいます。それがカマツカです。
カマツカ属の魚(提供:PhotoAC)カマツカはコイ目コイ科の淡水魚で、日本各地の河川や用水路に生息。成魚は全長15〜20cmほどで、砂や砂利の川底を好み、普段は底にへばりつくように暮らしています。
筆者が唯一見かけたカマツカも、20cmほどの魚影を優雅になびかせ、私の目を釘付けにしました。おかげで網を入れるタイミングが一瞬遅れたことを後悔しているほどです。
動かない魚<カマツカ>
また、アクアショップでも水槽の底にじっと貼り付くように静止していて、とにかく動かない。底生の魚だとはわかっていても、その徹底ぶりには少し驚かされます。
フィールドでなかなか見つからないのも、カマツカの習性そのものを表しているのかもしれません。
決して生息数の少ない魚種ではないという事実が、余計に筆者の会いたい気持ちを高ぶらせます。
下向きの口は効率よく捕食するため
アクアショップでカマツカを見たとき、下向きの口を見て「なるほど、底をつつくためだな」と自然に納得できました。知識として知っていても、実物を目の前にすると改めて腑に落ちるものです。
カマツカの口が顔の下側につく構造は、川底の砂や石の隙間をつつき、底生動物や藻類などを探し出すのに適しています。上を向いた口では効率よく餌を取ることができません。下向きであることに、ちゃんと理由があるんです。
同じコイ科の魚でも、中層を泳ぐオイカワやカワムツの口は前向きです。カマツカの口の向きは、川底専門という生き方をそのまま体現しているといえるでしょう。
ひげで感知?川底で獲物を見つける仕組み
カマツカには“1対のひげ”があります。
このひげには感覚器官が備わっており、砂や石の隙間に潜む獲物を感知する役割があるとされています。
川底でひげで周囲を探りながら餌を見つけるわけです。下向きの口とひげ、この2つが揃って川底ハンターとしての力が発揮されるのです。
川底ハンターたちの暮らし
カマツカは危険を感じると砂にもぐり、目だけを出してじっとする習性があります。その徹底した砂への執着ぶりから、「スナホリ」「スナムグリ」といった別名を持っているほどです。
筆者が一瞬だけ見かけたカマツカも、砂地にいました。見失ったのも、砂に潜ってしまったからかもしれません。
ガサガサをよくする筆者も、底生魚は捕まえづらい印象があります。それは石や砂に潜られると網をうまく入れられないからです。
網を先に構え石をどけて捕る方法もありますが、何百何千という石を1つずつめくっていくのか──と途方に暮れることもしばしば。しかしその苦労の先にはきっと、カマツカをはじめとした底生魚たちの世界が私たちを待っているのかもしれません。
(サカナトライター:そい太)