魚の中には自らの姿を隠したり、環境に擬態したりすることにより非捕食者から隠れ、捕食を有利にするものがいます。このような特徴を持つ魚としてアンコウの仲間やカサゴの仲間が知られており、擬態により狩りの成功率を上げていると考えられています。
イギリスのエディンバラ大学の科学者たちによる研究チームは、大西洋や地中海に生息するアジ科の大型種・ブルーランナーがメジロザメを隠れ蓑にして狩りをしていることを明らかにしました。
この研究結果は、科学雑誌「Ecology」に掲載されています(論文タイトル:To see and not be seen: Carangids hide behind sharks to prey on fish)。
サメと共生する魚
魚における共生では、クマノミとイソギンチャク、共生ハゼとテッポウエビなどが有名ですが、実はサメと共生している魚もいます。
一般的には危険な捕食者のイメージがあるサメですが、一部の魚はサメと共生することにより、捕食者から身を隠したり、サメを利用して寄生虫を取り除いたりしています。

今回の研究では、大西洋や地中海に生息するアジ科ギンガメアジ属のブルーランナー(Caranx crysos)もメジロザメ(Carcharhinus plumbeus)を利用して生活していることが水中映像により明らかになりましたが、本種のサメの利用方法はこれまでに知られていたものとは異なるものでした。
サメ利用して獲物を狩る
魚の捕食における戦略では、体の色や形を環境に適応させるパターンがよく知られており、アンコウやカサゴの仲間は擬態により獲物となる生物に気づかれにくくしていると考えられています。
メジロザメと一緒に泳ぐ姿が確認されたブルーランナーは、これらの戦略とは異なる方法により捕食を有利にしていることが判明。なんと、メジロザメを隠れ蓑にして狩りをする様子が映し出されたのです。
これまでに一部の魚がサメを利用して捕食者から隠れたり、寄生虫を取るのに利用したりすることは知られていましたが、サメを隠れ蓑にして獲物を待ち伏せする魚は目撃されていませんでした。
サメを隠れ蓑にした効果は?
イタリアのランピオーネ島沖で撮影された水中映像では、ブルーランナーがメジロザメを隠れ蓑にして狩りを行う例が34件あり、いずれのケースでもブルーランナーが1匹でサメの近くを短時間追跡した後、獲物となる小魚に奇襲をかけていたようです。

映像の分析の結果、通常であれば小規模な群れを形成するブルーランナーは、メジロザメを隠れ蓑にすることにより獲物を油断させ、狩りの成功率を高めていると考えられました。
実際、メジロザメを隠れ蓑にした場合、獲物はブルーランナーの接近に10%程度しか気づかなったのに対し、群れで狩りをする場合は高い確率(95%)でブルーランナーの存在に気づき、防御態勢をとったそうです。
自然には様々な相互関係がある
このように、ブルーランナーはメジロザメを利用して狩りの成功率を上げているのでした。
また、メジロザメを追跡する行動が狩りの成功率の上昇だけではなく、天敵から身を守るほか、サメの後ろを泳ぐことによりエネルギーを節約している可能性があると述べられています。
自然における生物の相互関係は、人間が思っている以上に複雑なのかもしれません。今後、研究でもさらに意外な共生関係が明らかになるかもしれませんね。
(サカナト編集部)