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水生昆虫の呼吸方法は<シュノーケル型>と<酸素ボンベ型>? 田んぼで見られる虫たちを観察してみよう

田植えの季節がやってきました。水の中で暮らす水生昆虫たちが顔を出し始める頃ですね。

彼ら水生昆虫は水中で生きるために、様々な呼吸法を身につけています。中には、驚くべき呼吸法もあるのです。

水の中で暮らす昆虫たちのサバイバル術

水生昆虫とは、水の中で一生を送る、あるいはライフサイクルの一部を水中で過ごす昆虫たちのことをいいます。

昆虫は本来、空気中の酸素を取り入れて陸で生活する生きものです。しかし、水生昆虫は水中でも呼吸ができるよう、独自の進化を遂げ、特別な「呼吸法」を手に入れました。

田んぼに多く見られる水生昆虫たちは、主に2つのスタイルで呼吸をしています。それが、「シュノーケル型」と「酸素ボンベ型」です。

シュノーケル型の<ミズカマキリ>

ミズカマキリは細長い体がカマキリとよく似ていますが、実はカメムシの仲間です。

鎌のような前脚で、小魚やオタマジャクシなどを捉えて体液を吸います。

ミズカマキリ(提供:PhotoAC)

お尻には、体と同じくらいある長さの“呼吸官”をつけており、これを水面に突き出して呼吸します。その姿は、まるでシュノーケルで呼吸しているかのよう。

水の中で暮らすカメムシの仲間は、この呼吸官を備えているものが多く、タイコウチなども同じ呼吸法です。

酸素ボンベ型の<ゲンゴロウ>

ツヤのある体が特徴的なゲンゴロウは、カブトムシなどと同じコウチュウ目に属しています。

細かい毛が生えたオールのような後ろ足を使って、とても速く泳ぐことができます。

死んだ魚やカエルを主食とする成虫のゲンゴロウ(提供:PhotoAC)

ゲンゴロウの成虫はお尻の先を水面に出し、そこから空気を取り込み、翅(はね)と体の隙間に空気を蓄えます。

背中には「気門」という呼吸口があり、蓄えた空気の中の酸素を気門から取り入れるのです。まるで酸素ボンベを背負っているみたいですよね。

2つの呼吸法を使いこなす!<コオイムシ>

背中に卵を背負った姿が印象的なコオイムシ。この卵はメスがオスの背中に産みつけたもので、卵を抱えているのは皆、父親です。

背中に卵を載せたオスのコオイムシ(撮影:草間あやめ)

コオイムシはカメムシの仲間なので、ミズカマキリと同じく呼吸官を持っており、この呼吸官は短く出し入れすることができます。

水面に近い場所では、呼吸管を水面に出し、シュノーケル型の呼吸をしますが、水中に潜る時は、ゲンゴロウと同じように空気を翅の下に蓄え、酸素ボンベ型の呼吸もできます。

父親として卵を守るため、水中で長く活動できる進化を遂げたのかもしれませんね。

水生昆虫たちの未来を守るために

田んぼの水生昆虫たちを守りたい(提供:PhotoAC)

独自の呼吸法と進化で水中での暮らしに適応してきた水生昆虫たち。今、その生息環境は決して安泰とは言えません。農薬や環境の変化により、数は年々減少傾向にあります。

彼らの小さな命が未来にも続くよう、共に生きる道を大切にしていきたいですね。

(サカナトライター:草間あやめ)

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草間あやめ

ガサガサが大好きな一児の母。息子と一緒にタモ網を持って水辺を駆け回っています。好きな水生生物は、カエルとウツボ。海、川、田んぼで見つけた生き物の魅力を発信いたします。

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