でっぷりとした見た目にどこか抜けたようなかわいい顔の魚「タラ」。
トロっとした白身はいろんな調理法に合って美味しいですし、たらこや明太子もたまりませんね。そんなお馴染みのタラですが、実は世界中で愛されていることを知っていますか。
世界中の人々の胃袋を支えてくれるタラの生態とは? そして、世界の食用事情はどうなっているのでしょうか。
タラの生態
タラ(鱈)は、北半球の寒冷な海に広く生息する魚で、特に北太平洋のマダラや、北大西洋のタイセイヨウダラがよく知られています。

冷たい海を好む、水深200~600メートルの海底近くに棲む底生魚で、主に小魚やエビなどを食べる肉食性です。
日本では、北海道から東北・北陸沿岸にかけて分布し、特に冬に旬を迎えることから、漢字では「雪を好む魚」として「鱈」と書かれます。体長は1メートルを超えるものもあり、白く淡泊な身質が特徴です。
食用としてのタラ
タラはその栄養価と調理のしやすさから、世界中で食用魚として親しまれてきました。
日本では鍋料理やムニエル、煮物などさまざまな料理に使われるほか、「たらこ」や「明太子」として魚卵の加工品も食卓に並びます。日本酒によく合う白子もおいしいですね。
一方、世界に目を向けると、イギリスでは「フィッシュ・アンド・チップス」の定番魚として、またスペインやポルトガルでは「バカラオ(干しダラ)」として、塩漬け乾燥されたタラが伝統的に使われています。

また、タラの肝臓から抽出される「タラ肝油(cod liver oil)」は、ビタミンDやAが豊富な健康食品として、古くから北欧を中心に利用されてきました。現在ではサプリメントとして、日本でも販売されています。
タラと人間の文明
タラは、人類の歴史の中でも極めて重要な食料源となる魚です。
中世ヨーロッパでは、カトリック教会の「肉を控える日」にも食べられる重要なタンパク源として広まりました。その需要に応じて、大西洋沿岸では大量のタラが漁獲され、干物や塩蔵品として世界中に輸出されるようになります。
しかし、その人気が裏目に出る時期もありました。20世紀後半、北大西洋では乱獲によってタラ資源が著しく減少。特にカナダ東部のニューファンドランド島沖ではタラ漁が政府により全面禁止されるという事態が10年間で2度も起こりました。
以来、世界各国で資源保護のための漁獲制限や国際管理が行われるようになっています。

近年は、ノルウェーやアイスランドなどの北欧諸国が科学的管理に基づいた「持続可能なタラ漁業」に取り組んでおり、基準サイズに満たない小さいタラは漁獲禁止など様々なルールが設けられています。
そういった努力もあり、タラは再び世界の食卓に安定して供給されつつあります。
タラは「鱈」という漢字の名前の印象も強く、海外でこれほどまでに愛されている魚とは知らない人も多いかもしれません。人類の発展に欠かせない食糧であり、今でも多くの人々がタラに関わって生計を立てています。
スーパーでタラに出会ったら、世界の人々にも想いを馳せてみてくださいね。
(サカナトライター:halハルカ)