私の好きな水生生物はシロワニ。シロワニはネズミザメ属シロワニ科に唯一分類されるサメです。
従来はオオワニザメ科に分類されていましたが、最近の研究で系統的に離れていることが判明し、独立したグループになりました。
<シロワニ>の生態と魅力
シロワニは、名前に「ワニ」とありますがサメの仲間です。
日本では古来よりサメのことをワニと呼ぶ風習があり、中国地方や広島県の一部では今でもワニと呼んでいます。
シロワニは世界中の暖かい海に生息しており、日本では小笠原諸島で見ることができます。寿命はおよそ20年と言われています。
夜行性なので、昼間は岩陰などでじっとしており、体力を温存。夜になると彼らは獲物を探し始めます。
強面だけど臆病というギャップ
見た目は強面で、細長く鋭利な歯を持っています。この歯で獲物を噛み切るわけではなく、掴んで丸吞みで捕食します。サバやカツオなどの回遊魚や、イカなどの頭足類が捕食対象です。
獰猛にみえるシロワニは基本おとなしく、臆病で人間を襲うことは基本ありません。私は、“強面だけど臆病”というギャップにひかれて、好きな魚となりました。
また、群れを成し協力して獲物を狩りすることもわかっています。そんな仲間と協力し合うシロワニですが、彼らにはとても恐ろしい一面もあります。
命をかよわせた瞬間から凄絶なサバイバルにさらされる
シロワニは卵胎生で、母サメのお腹の中で孵化します。そしていちばん最初に孵化したサメは、お腹の中にあるまだ孵化していない卵や、あとから孵った自分より小さい赤ちゃんサメを食べ始めるのです。
同じタイミングで孵化した場合には、生存競争をかけて戦うそう。生まれた瞬間から兄弟同士でのサバイバルです。

では、兄弟は1匹もいないのかといわれるとそうではありません。シロワニは左右に1対の子宮を持つため、同時に2匹を出産します。
いちどの出産で2匹しか生まれないというのは、卵生であるサメの中では最も繁殖率が低く、また、繁殖の頻度も2年に一度と少ないです。
乱獲の影響もあり、絶滅の危機に
胎内から広く大きな海に出たらすぐに独り立ちします。
胎内で熾烈な兄弟争いを生き抜いた後で、この時には既に体長は1メートル近くあります。彼らは肉体的にも精神的にも、生まれた直後でも一人前なのでしょうか。
個体の数が増えづらいうえに、現在は乱獲の影響もあり、絶滅の危機にも瀕しています。しかし、この厳しい自然界で今日まで生き残っている、とてもたくましいサメだともいえるでしょう。
そんなシロワニですが、この目で見てカメラにかっこいい姿を収めるというのが、私のダイバー人生の目標でもあります。なので、いつか必ず小笠原諸島に行き、観察します。
その時には私の撮った写真と感想をまた綴りたいと思います。
(サカナトライター:ポンた)