「好きな水生生物ってなんだろう?」と考えたときに、真っ先に思い浮かんだのが「イッカク」です。
そう、あのものすごく長い角が生えているクジラ。子どもの頃、何かの番組でその存在を知り、「現実の世界にこんな生き物がいるんだ!」と衝撃を受けたことを今でも鮮明に覚えています。
あんなに長い角を生やした生き物が海にいるなんて、ファンタジーの世界にすんでいるようではありませんか。
イッカクってどんな生き物?
まずはじめに、イッカクの角について。知っている人も多いと思いますが、あのファンタジーを思わせる角、実は牙なんです。
角ではなく牙と知ったときは少しがっかりした気持ちになりました。ほんの少しだけです。
基本的に牙が長く伸びるのはオスのみ。長さは最大で3メートルにもなり、ねじれながら生えているのも特徴のひとつです。
牙であろうが角であろうが、あの「角然とした」としたフォルムは本当にかっこいいと思います。

イッカクは北極海に生息するクジラの仲間。クジラの仲間ということは哺乳類なので、厳密には魚ではありません。
成長して大人になった個体のサイズは、4~6メートルほど。クジラとしては比較的小さめな印象です。
謎多きイッカクの生態とその魅力
イッカクは北極海という隔絶された地域に生息しているということもあり、その生態は未だ多くの謎に包まれています。牙が長く伸びている理由に関しても、いろいろと仮説が立てられているものの、正確には分かっていないようです。
未だベールに包まれているその生態と、氷に閉ざされた北極海にしか生息していないという希少性は、イッカクをより一層ファンタジーたらしめています。実際に、空想上の生き物である「ユニコーン」のモデルになったと言われており、中世ヨーロッパではイッカクの牙がユニコーンの角として高値で取引されていたそうな……。
現状は飼育なども難しいようで、日本ではもちろん、世界中の水族館を探してもイッカクはいません。生きて泳いでいる姿を見るためには、北極海まで行く必要があります。
存在そのものがロマンの塊。角(牙)がかっこいいのはもちろんのこと、なかなかお目にかかれないことや謎が多いといった点にも筆者は魅力を感じます。
今でもイッカクのことを考えるとワクワクします。これから先、衝撃の新事実が解明されるかもしれません。その結果さらに謎が深まるなんてこともあるのではないでしょうか。
いろいろと妄想を膨らませつつ、今回はこのあたりで。イッカク、いつか会えるといいな。
(サカナトライター:こひ)